「指まで舐めちゃうおいしさ」の培養鶏肉は2021年に一般販売
「指まで舐めちゃうおいしさ」の培養鶏肉は2021年までには一般販売されそうだ。肉牛や鶏を育てるときの二酸化炭素排出量を削減でき、頭部や骨、羽など、食用に適さない部位を培養しない分、投入するエネルギーが少なくて済む夢の食料源だが、今のところコストがかかりすぎる。 by Jamie Condliffe2017.03.16
フライドチキンを食べながら後ろめたい気持ちになる? だが、将来、フライドチキンを食べる時の罪悪感は部分的にはなくなるかもしれない。鶏肉を作るのに一羽の鳥も傷つけなくて済むようになるかもしれないのだ。
メンフィス・ミーツ(Memphis Meats)は、動物を殺さずに肉を生成しようと競い合う主要スタートアップの1社だ。メンフィス・ミーツが研究開発中の「クリーン・ミート(clean meat)」は、調理して食べるのに十分な大きさの塊に成長するまで、動物の細胞に栄養を与えて、研究室で培養して肉を作る。メンフィス・ミーツはすでに(他社も同様)牛肉を培養しており、昨年はミートボールを培養製造した。
だが今回メンフィス・ミーツが着目したのは鶏肉だ。メンフィス・ミーツの発表によれば、動物を殺さずに、研究室で培養した鶏肉と鴨肉の肉片を初めて生成したという。研究室で培養された代替肉で、鶏の唐揚げとダック・ア・ロランジュを作った。
メンフィス・ミーツのような企業が成長できれば、食用動物の飼育時に発生する温室効果ガス排出を削減し、しかも動物風味のタンパク質を食べたいという、地球に優しい肉好きの欲求を満たせる。また、肉食文化は動物の命を奪うことと表裏一体だが、培養肉なら、こうした問題は避けられる。適切な条件さえ整えば、わずかな細胞から数十億個の鶏の唐揚げが作れるのだ。
さて、こうなると培養肉の味が知りたくなる。ウォール・ストリート・ジャーナル紙が培養鶏肉を試食した人に聞いたところ「普通の鶏の胸肉よりも柔らかいですが、自然な肉の風味をほとんど再現できています」という。また、培養肉を食べた人は、また培養肉を食べたいというが、これこそ培養肉の成功を示す最も重要な指標だろう。
では、ケンタッキー・フライドチキンは研究室で培養された「指まで舐めちゃうおいしさ(It’s finger lickin’ good.)」の鶏肉をすぐにも揚げ始めるだろうか。いくつかの理由でそうはならないだろう。まず、研究室で培養される肉は大量生産には程遠く、生産規模が依然として小さいままだ。だが、消費者から見た最大の問題は費用だ。メンフィス・ミーツの推定では、動物を使わない鶏肉を約450グラム生産するために9000ドルの費用がかかる。約1年前にメンフィス・ミーツが牛肉を生成したときの半額以下の費用とはいえ、いくら好奇心旺盛で動物の命が気がかりな美食家でも、食費に9000ドルはかけない。
とはいえ、昨年の感謝祭(10月下旬、七面鳥を食べるアメリカの風習)に合わせてMIT Technology Reviewが記事にしたとおり、培養肉の価格は時間がたてば低下するだろう。実際、研究室で培養する七面鳥肉の製造に携わっているノースカロライナ州立大学のポール・モズジャク教授は、培養肉は理論上、動物を飼育するより安上がりになる可能性があるという。培養肉は、余計な骨や羽、脳等の部位を育成しなくて済むため、全てのエネルギーと栄養は純粋に食肉を育てるためだけに使われるからだ。
メンフィス・ミーツもモズジャク教授と同じ見解だ。メンフィス・ミーツでは、一般消費者向けに、2021年までに待望の培養肉を販売できる割合で、費用を低減できるとしている。もし安価な培養鶏肉を生成できるようになれば、鶏の唐揚げを食べるときの気がかりはカロリーだけだ。
(関連記事:Wall Street Journal, “感謝祭特価3万4000ドルの人造七面鳥,” “If the World Gives Up Meat, We Can Still Have Burgers,” “The Problem With Fake Meat”)
- 人気の記事ランキング
-
- What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
- Why AI could eat quantum computing’s lunch AIの急速な進歩は 量子コンピューターを 不要にするか
- Google DeepMind has a new way to look inside an AI’s “mind” AIの「頭の中」で何が起きているのか? ディープマインドが新ツール
- This AI-generated Minecraft may represent the future of real-time video generation AIがリアルタイムで作り出す、驚きのマイクラ風生成動画
- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。