フラッシュ2023年12月20日
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気候変動/エネルギー
次世代「量子バッテリー」の新たな充填プロトコルを提案=東大
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東京大学の研究チームは、量子開放系の一種である量子衝突モデルにおいて、「不確定因果順序」と呼ばれる、新しい因果構造に由来する特異な効果を発見。この効果を利用した量子バッテリーの充填プロトコルを理論的に提案した。さらに、共同研究を進めている北京計算科学研究センターが、量子光学実験により同理論の検証に成功。研究チームの提唱した量子バッテリー充填方式が、既存の方法より優れた性能を示すことを理論と実験の両面から明らかにした。
重ね合わせの原理や量子もつれなどの性質を利用してエネルギーを貯蔵する「量子バッテリー」は、従来のバッテリー機能を遥かに凌ぐ充填速度や高い容量を実現する可能性があるとして注目されている。研究チームは、従来の量子力学の枠組みを超えて事象の因果順序にも重ね合わせ原理を持ちうるとする「不確定因果順序」仮説に着目し、量子バッテリーの充填プロセスにおける量子重ね合わせの実現についての研究を進めてきた。
同チームは今回、量子系間のエネルギー転移を記述する量子衝突モデルを、充填装置のダイナミクスを生成するモデルをして採用。より多くのエネルギー転移には強い量子系間の相互作用が必要とされるという直感が、量子衝突モデルのダイナミクスの因果順序における量子の不確定性により、成り立たなくなることを明らかにした。
さらに、このことに基づいて、弱い相互作用を利用しても強い相互作用と同様の効果を得ることを可能にする「相互作用の反転効果」が、不確定因果順序のダイナミクスで現れることを示した。同チームによると、この物理現象は量子バッテリーの充填において大きな利点となり、従来の限界を超えるエネルギー転移と熱効率の向上を同時に実現できるという。
研究論文は、フィジカル・レビュー・レターズ(Physical Review Letters )に2023年12月13日付けで掲載された。
(中條)
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