フラッシュ2023年11月15日
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気候変動/エネルギー
リチウム空気電池正極の高容量とサイクル寿命を両立=東北大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東北大学や物質・材料研究機構(NIMS)などの共同研究チームは、次世代蓄電池として注目されているリチウム空気電池のカーボン正極(カソード)として、積層と劣化サイト(グラフェンの端)が無いグラフェン構造を、マルチスケールで階層的に制御した新材料を開発。多孔性と劣化サイトフリーにより、高容量とサイクル寿命が両立できることを示した。
リチウム空気電池は、理論的なエネルギー密度は現在のリチウムイオン電池の数倍以上に達し、軽さが求められるドローンやIoT機器、家庭用蓄電などへの応用が期待されている。だが、電池内部で正極、負極、電解液の全てが激しく劣化するため、十数回程度しか可逆的に充放電できないことが大きな課題となっている。
研究グループは今回、あらゆるカーボン材料を構成する基本構造であるグラフェンに着目。正極にカーボン新素材「グラフェンメソスポンジ(GMS)」の自立膜を使うことで、高容量を得るのに必要な豊富な細孔容積を確保した。さらに、グラフェンの積層を排除することで電池を軽くし、劣化サイトを排除することでサイクル寿命を得られるようにした。
研究チームによると、今回のリチウム空気電池は「グラフェン構造を3次元化する場合の1つの理想形」であり、現段階では実用レベルの電流密度と容量でサイクルすると21回程度しか充放電ができないが、負極と電解液の改良が進めば、寿命はさらに増加するとしている。研究論文は、科学誌アドバンスト・エナジー・マテリアルズ(Advanced Energy Materials)に2023年11月10日付けで掲載された。
(中條)
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