米軍人の個人情報、ブローカーから簡単に購入できることが判明
米国の現役の軍人や退役軍人の詳細な個人情報が、データ・ブローカーから驚くほど簡単に購入できることがわかった。国家安全保障にも関わる軍人の情報が簡単に手に入るという事実は、関係者に衝撃を与えている。 by Tate Ryan-Mosley2023.12.06
米国ではデータ・ブローカーが、1件あたりわずか0.12ドルで、現役の軍人や退役軍人に関する機密性の高い個人データを販売している。その中には、氏名、自宅住所、位置情報、純資産、宗教、子どもや健康状態に関する情報などが含まれている。
11月6日に公表された不安を誘う研究報告書で、デューク大学の研究チームが米国のデータ・ブローカー12社に接触し、情報を購入するために何が必要かを問い合わせた。研究者チームは最終的に米国軍人に関する数千件のデータを購入し、多くのブローカーがほとんど審査なしでデータの販売を持ちかけてくることを明らかにした。また、ブローカーは買い手の使用している電子メールのドメインが米国でもアジアでも、取引をためらうことはなかった。
ウェスト・ポイントの米陸軍士官学校から資金の一部の提供を受け、1年間かけて実施されたこの研究は、データ・ブローカーが非常に高いプライバシー・リスクと国家安全保障リスクを生み出していることを浮き彫りにしている。データ・ブローカーは、データを収集・集約して売買する、ベールに包まれた数十億ドル規模の業界の一部である。それらの行為は、現在の米国において違法ではない。多くのブローカーは、自社のデータベース内に各個人に関する数百の個別データ・ポイントを持っていると宣伝している。そしてこの業界は、個人や消費者へのプライバシー侵害を悪化させているとして批判されてきた。
研究チームは、軍関係者に関する非常に機密性の高いデータを簡単に入手できたことに「衝撃を受けた」という。「実際、電子メール・アドレスと銀行口座のほか、数百ドルがあれば、誰でも私たちが入手したのと同じ種類のデータを取得できるように思えます」。この研究報告書を共同執筆した大学院生のヘイリー・バートンは、MITテクノロジーレビューに宛てた電子メールで明かした。
報告書の執筆者たちは、この研究が米国の議員たちへの警告になることを期待しており、議会に対しては、データ・ブローカー業界に制約をかける包括的なプライバシー関連法の成立を求めている。
「本当に必要なのは、このエコシステムを規制することです」と話すのは、報告書の主執筆者であり、プライバシー研究を専門としているデューク大学サンフォード公共政策大学院のジャスティン・シャーマン上級研究員だ。「結局のところ、これは議会の問題です。この種のリスクに対処するには新たな法的権限が必要であり、規制機関にはより多くのリソースが必要だからです」。
報告書をレビューした米上院軍事委員会のエリザベス・ウォーレン上院議員も、大筋で同意する。「データブローカーは、重大な国家安全保障上のリスクを考慮することなく、軍人とその家族に関する機密情報をごく少額で販売しています」。マサチューセッツ州選出の民主党議員であるウォーレンは、MITテクノロジーレビューに宛てた声明でこう述べた。「この報告書は、軍人や退役軍人、およびその家族の個人データを保護するために、本当の意味でのガードレールが必要であることを明確にしています」。
機密情報の販売
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