KADOKAWA Technology Review
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エネルギー/持続可能性
Vichhika Tep
35歳未満のイノベーター35人 2023エネルギー/持続可能性
気候危機は多様な角度からの回答を求めている。イノベーターたちは、二酸化炭素回収、電池製造、送電網の管理といった問題を解決しようと取り組んでいる。

Sivaranjani Seetharaman シヴァランジャニ・シータラマン (33)

所属: パデュー大学

再エネやEVの普及、マイクログリッドの導入などで複雑化する電力送電網を管理するソフトウェアを開発。送電網のパフォーマンスを向上させる。

老朽化が進む送電網は、ますます大きな課題に直面している。年々 増加する再生可能エネルギーによる発電は、天候や時間帯によって発電量が大きく変動するし、電気自動車(EV)の普及はこれまで以上に多くの電力を要求する。加えて、ますます激しくなる熱波や洪水、暴風雨が、絶えず電力システムの稼働を脅かし続けている。

問題をさらに複雑化しているのは、より多くの家庭や企業が独自のソーラーパネル、バッテリー、マイクログリッド(小規模電力網)を導入し、電力の消費者であると同時に供給源にもなっていることだ。

パデュー大学で生産工学を専門とするシヴァランジャニ・シータラマン助教授(33)は、これらの課題に直面してもなお送電網を安定稼働させるツールの開発を進めている。

いくつかの取り組みの1つとして、シータラマン助教授は、電力源・貯蔵システムやその他のインフラの組み合わせに応じて、電力システムが需要の急増や異常気象に対しどのように反応するかを評価するモデルを開発した。一例として、同助教授らのチームは、テキサス州の大型トラック輸送部門がEVに移行した場合、全車両の11%が一度に充電するだけで、地域送電網を不安定化させる恐れがあることを突き止めた。

シータラマン助教授は、機械学習と自身が開発したモデルを駆使して、送電網の運用者がますますダイナミックかつ複雑になりつつある電力システムを管理するのに役立つアルゴリズムを訓練した。このソフトウェア・ツールは、需要と供給を予測したり、需要、供給、天候の変化に応じて、その時々に最適な電力源や理想的な送配電網の経路を決定したりするのに役立つ。

また、需要応答システムの導入の支援もできる。このシステムを通じて、送電網の運用者は、需要ピーク時にエネルギー使用を控えるよう顧客を奨励したり、特定の条件下では顧客のエネルギー使用量を制限したりできる。

送電網にのしかかる課題に完全な形で対処するには、今後数十年間にクリーン発電、エネルギー貯蔵設備、ハードウェアの大幅拡充が必要だ。しかし、より優れたアルゴリズムやその他のソフトウェア・ツールを開発することで、現在の送電網のパフォーマンスを急速に向上させ、将来に向けてより効率的で柔軟かつ堅牢な送電網を構築できる、とシータラマン助教授は言う。

(ジェームス・テンプル)

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