気候テック15:小型モジュール式原子炉で先行するニュースケール
電力産業の脱炭素化には、再生可能エネルギーを補うベースロード電源が必要となる。MITテクノロジーレビューが選ぶ「気候テック企業15」の1社であるニュースケール・パワーが開発する小型モジュール式原子炉は、その有力な候補となる可能性がある。 by Mark Harris2023.10.18
核分裂は炭素を排出しないエネルギーの先駆的存在であり、太陽光発電がまだ研究室での実験に過ぎなかった1950年代に、30万戸の米国の家庭に電力を供給していた。だが、事故や放射性廃棄物、原子炉建設にかかる膨大な費用により、原子炉は商業的にも政治的にも厄介なものとなり、数十年の成長の後に数十年の衰退が訪れた。
2002年、オレゴン州立大学の研究チームは、既存の軽水炉を99%縮小し、外部から供給される水や電力がなくても原子炉の安全性を確保できる、受動的冷却に依存するはるかにシンプルな原子炉を作る道を見い出した。5年後、彼らはこのテクノロジーを商業化するためにニュースケール・パワー(NuScale Power)を創業した。同社の最初の本格的な原子炉は、自社製パワー・モジュール6基を備え、500メガワット近く(米国の平均的な家庭約25万軒分の電力)を発電する予定で、稼働もそう遠くないうちに実現しそうだ。
基本データ
潜在的なインパクト
ゼロカーボン経済への移行には、太陽光、風力、その他の再生可能エネルギーの発電量の変動を補うために、24時間年中無休で安定的に供給される信頼できるベースロード・エネルギーが必要である。核分裂はベースロード・エネルギーの供給に適しており、電力会社には核分裂で発電した電力を地域や国の送電網に統合してきた数十年の経験がある。
今日、原子力発電は米国の発電量の約5分の1、世界で生産される電力の約10分の1を供給している。しかし、数十年前に建設された原子力発電所が耐用年数を迎える中、建て替えられる原発は比較的少ない。米国では過去10年間 …
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