KADOKAWA Technology Review
×
自動運転にもLLM革命、チャットで賢くなるAIドライバー
Wayve
人工知能(AI) Insider Online限定
This driverless car company is using chatbots to make its vehicles smarter

自動運転にもLLM革命、チャットで賢くなるAIドライバー

チャットGPTのような大規模言語モデル(LLM)をロボット工学に用いる動きが広がっている。自動運転車を開発するスタートアップ企業のウェイヴ(Wayve)は、LLMと自動運転ソフトを組み合わせることで、安全性を高められるという。 by Will Douglas Heaven2023.09.20

自動運転車のスタートアップ企業であるウェイヴ(Wayve)は、自社の車両に尋問をしている。運転時の決定について問いかけ、答えさせているのだ。「チャットGPT(ChatGPT)」と同じ技術を、無人乗用車の訓練に役立てようというアイデアだ。

ウェイヴは既存の自動運転ソフトウェアと大規模言語モデルを組み合わせて、「リンゴ-1(LINGO-1)」というハイブリッド・モデルを開発している。LINGO-1は映像データと運転データ(秒単位での車の動き)を、車からの景色や車の動きについての自然言語の記述と同期させる。

英国に拠点を置くウェイヴは、この数年で次々にブレークスルーを起こしてきた。2021年には、ロンドンの通りで訓練した人工知能(AI)を使って、英国の他の4つの都市で自動車を運転できることを示した。これは通常、膨大な再設計が必要とされる課題である。2022年には同じAIで、2種類以上の車両を運転させることに成功した。これも業界初のことだ。そして今回ウェイヴは、自動車とチャットができるようにしたのである。

筆者は先日、ウェイヴにデモを見せてもらった。ジャガー「I-PACE」の車載カメラで撮影した映像を再生していたアレックス・ケンドール最高経営責任者(CEO)は、映像内のランダムな位置へと飛び、チャットロボに質問をタイピングし始めた。すると自動車は答える。

「今日の天気はどうですか?」——曇りです。

「どんな危険が見えますか?」——左に学校があります。

「なぜ停まったのですか?」——赤信号だったからです。

といった具合だ。

「この数週間で、いくつか注目すべき成果が出ています」とケンドールCEOは話す。さらに、「こんな質問をしようとは考えもしませんでしたが、でも見てください」と言い、次のようにタイピングした。

「右にある建物は何階建てですか?」——3階建てです。

「これを見てください!」 ケンドールCEOは子どもを自慢する父親のように言う。「こんな風に答えを返すように訓練したわけではありません。本当に驚きました。私たちはこれをAIの安全性に関するブレークスルーだと考えています」。

「LINGO-1の能力には感心しています」と、カリフォルニア大学バークレー校のロボット工学研究者、ピーター・アビール教授は話す。アビール教授はロボット工学企業コバリアント(Covariant)の共同創業者で、LINGO-1のデモを体験したことがある。同教授は、LINGO-1に対して「青信号だったらどうしますか」といった「もし …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中!年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
  1. Why handing over total control to AI agents would be a huge mistake 「AIがやりました」 便利すぎるエージェント丸投げが危うい理由
  2. OpenAI has released its first research into how using ChatGPT affects people’s emotional wellbeing チャットGPTとの対話で孤独は深まる? オープンAIとMITが研究
  3. An ancient man’s remains were hacked apart and kept in a garage 切り刻まれた古代人、破壊的発掘から保存重視へと変わる考古学
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る