フラッシュ2023年6月21日
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東工大、衛星搭載用に軽くて折りたためる無線機
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東京工業大学の研究チームは、薄くて屈曲性のあるフレキシブル液晶ポリマー(LCP)基板を用いて、柔らかく折り曲げ可能な宇宙展開型フェーズドアレイ無線機を実現した。重量は従来のリジッド基板(硬い基板)の無線機の4分の1以下に抑えており、折りたたんで収納率を高めることで、衛星の打ち上げコストを大幅に削減できるとしている。
研究チームは今回、同大学で開発したCMOS無線ICチップを、厚さの異なる層構成をもつLCP基板上に実装して、Ka帯(アップリンクの17~21GHz、ダウンリンクの27~31GHzの周波数帯)64素子フェーズドアレイ無線機を作成した。フェーズドアレイとは、複数のアンテナへ位相差をつけた信号を給電することで、放射方向を電気的に制御するビームフォーミングを実現する技術である。
同無線機のLCP基板には厚い領域と薄い領域があり、厚い領域にアンテナや無線ICを搭載し、薄い領域には高周波伝送線路を通す構成を採用。フェーズドアレイ無線機の求める多層構成による高密度化と、宇宙展開構造の求める柔らかく折り曲げやすい形状という2つの条件を両立させることに成功した。
試作したフェーズドアレイ無線機は、±50°のビームステアリング(電波を細く絞り、任意の方向に集中的に発射・制御すること)が可能で、デジタル衛星テレビ放送規格「DVB-S2X」における256値振幅位相変調に対応し、12Gbpsの通信速度を達成した。さらに、従来のリジッド基板の無線機と同じ面積で比較すると、重量は4分の1以下と大幅に軽量化した。
より高速かつ安価な衛星通信サービスの提供を目指す衛星コンステレーションでは、衛星の小型・軽量化による打ち上げコストの削減が求められており、従来のリジッド基板を用いた無線機は重量が重く、収納率も低くなるという課題があった。今回の研究成果は、6月11日から米サンディエゴで開催された国際会議「IMS 2023(International Microwave Symposium 2023)」で発表された。
(中條)
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