フラッシュ2023年6月18日
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太古における「宇宙再電離」現場の直接観測に成功=名大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]名古屋大学やチューリッヒ工科大学、マサチューセッツ工科大学などの国際共同研究チームは、約129億年前の太古の宇宙において、若い星形成銀河が周囲の銀河間ガスを電離して「宇宙再電離」を引き起こしている現場を直接観測することに世界で初めて成功。当時の銀河の周囲には泡状の電離領域が約250万光年にわたって広がっていたことを明らかにした。
宇宙再電離は宇宙の歴史において最後に起こったガスの大転換であり、宇宙の水素ガスのほとんどが、中性原子の形から高温プラズマに戻ったとされている。宇宙再電離は、ビッグバン後、約1億5千万年から10億年の間に起こったと言われているが、再電離の原因はこれまで特定することが困難だった。
研究チームは今回、クェーサー(超巨大ブラックホールに周囲の物質が降着することで明るく輝く活動銀河核のうち、最も明るい部類の天体)に着目。遠方クェーサー領域を、最先端の観測装置であるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を用いて観測し、ビッグバン後7億5千万年から11億年の時期の星形成銀河を高効率で検出し、世界最大の分光銀河サンプルを構築した。
さらに、銀河の空間分布とクェーサーの地上観測によって得られた銀河間ガスの物理状態を比較することで、銀河が周囲のガスを電離し、宇宙再電離を推し進めている直接的な証拠を得た。研究チームによると、宇宙が部分的にしか電離されていない宇宙年齢9.5億年頃、銀河からの電離放射の局所的な影響によって銀河の周りに半径250万光年程度の泡状の電離領域が生成され、さらに1億年ほど経過して、個々の電離領域が広がり重なり合うことで宇宙全体が電離されたという。
今回の研究成果は、米国天文学会の雑誌アストロフィジカル・ジャーナル(Astrophysical Journal)に2023年6月12日付けで掲載された。
(中條)
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