フラッシュ2023年5月1日
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低温・低圧でもアンモニア合成を促進する水素化物を開発=東工大
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東京工業大学の研究チームは、大気に対する安定性と高い触媒活性を両立させた、アンモニア合成を促進する新しい水素化物を開発した。この新材料をコバルト触媒と組み合わせることで、ルテニウムなどの貴金属触媒を使わなくても、環境負荷を低く抑えられる低温環境下での高いアンモニア合成活性を達成できるという。
現在、工業的なアンモニア合成で一般的に用いられているハーバー・ボッシュ法では、高温・高圧が必要となる製造過程で大量の二酸化炭素が発生するという問題がある。ルテニウムなどの遷移金属触媒を用いれば温和な条件下でのアンモニア合成を促進できることが報告されているが、ルテニウムは貴金属であるため実用面で課題がある。
研究チームは今回、「充填トリジマイト型構造」を持つアルミン酸バリウム(BaAl2O4)に着目。酸素の一部をヒドリドイオン(H−、負の電荷を持つ水素イオン)に置き換えた電子化物(エレクトライド)である「BaAl2O4-xHy:e‒z」を、コバルト触媒の担体(運び手)として用いると、ルテニウム触媒よりはるかに高いアンモニア合成活性が実現することを発見した。
コバルト触媒の活性を高める新材料「BaAl2O4-xHy:e‒z」では、3次元的に連結したAlO4四面体がカゴ状の骨格をつくり、結晶構造の内部の空間にH−や電子が安定した形で取り込まれて保護されるため、大気中での安定性が向上する。さらに、空間に取り込まれた電子による強力な電子供与性と格子中に取り込まれたH−の効果により、コバルト触媒表面での窒素解離と水素化を大幅に促進し、その結果、コバルト触媒として世界最高レベルの性能を実現できるという。
低温でのアンモニア合成については、H−を有する触媒材料が有効に働くことが報告されているが、そうした材料のほとんどには「大気に暴露すると活性が大幅に低下する」という課題があった。今回の研究成果は、米化学学会誌(Journal of the American Chemical Society)オンライン速報版に2023年4月27日付けで公開された。
(中條)
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