フラッシュ2023年4月19日
-
ストレスに強い脳と弱い脳のメカニズムを解明=京大
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]京都大学の研究チームは、繰り返し心理社会的ストレスに晒された際に、適応反応を示すか不適応反応を示すかの個体差を決定する脳内メカニズムを発見した。困難や逆境に適応する能力(レジリエンス)を高める制御法の開発、ストレスが引き金となって発症するうつ病や不安障害の病態究明や新たな治療法の開発に繋がることが期待される。
研究チームは今回、ストレスに強い系統のマウスと、ストレスに弱い系統のマウスに対し、繰り返しの心理社会ストレスを5日間負荷し、これら2種類のマウスの脳内でどのような変化の違いがあるのかを調べた。その結果、ストレスに弱いマウスでは、前帯状皮質とよばれる場所での神経活動が著しく低下していることと、遺伝子の発現量を調節する「Fos」タンパク質の量が顕著に減少していることを突き止めた。一方、ストレスに強いマウスではこのような変化は認められなかった。
さらに、ストレスに弱いマウスを用いて前帯状皮質におけるFosタンパク質の量を人為的に増やす神経活動操作をしたところ、ストレスに強いマウスになった。逆に、ストレスに強いマウスの前帯状皮質におけるFosタンパク質の量を人為的に減らす遺伝子操作実験をしたところ、ストレスに弱いマウスになった。
人間の脳には、ストレスを受けてもそれに適応するシステムが備わっているため、通常の生活を送ることができる。しかし一方で、心理社会的ストレスに適応できずに精神疾患を発症する人もいる。このようにストレスを感じる度合いは個人により異なるが、その原因はよく分かっていなかった。研究論文は、国際学術誌サイエンス・アドバンセズ(Science Advances)に2023年4月5日付けで掲載された。
(中條)
-
- 人気の記事ランキング
-
- These AI Minecraft characters did weirdly human stuff all on their own マイクラ内に「AI文明」、 1000体のエージェントが 仕事、宗教、税制まで作った
- Promotion MITTR Emerging Technology Nite #31 MITTR主催「再考ゲーミフィケーション」開催のご案内
- The startup trying to turn the web into a database Webをデータベースに変える、新発想のLLM検索エンジン
- 3 things that didn’t make the 10 Breakthrough Technologies of 2025 list 2025年版「世界を変える10大技術」から漏れた候補3つ
- OpenAI’s new defense contract completes its military pivot オープンAIが防衛進出、「軍事利用禁止」から一転