世界の「再エネ化」を進める材料、地球上に十分に存在
気候変動対策のためのインフラを構築するためには材料が必要だ。新たな研究によって、それらの材料の埋蔵量は十分であることが明らかになった。だが、採掘・加工に伴う、重大な社会的・環境的課題が指摘されている。 by Casey Crownhart2023.02.07
再生可能エネルギーで世界に電力を供給するためには、多くの原材料が必要となる。幸いなことに、アルミニウム、鉄鋼、レアアースメタルについては、十分な量があることが新しい分析によって明らかになった。
2015年のパリ協定で、世界のリーダーたちは地球温暖化を1.5℃未満に抑えるとの目標を掲げた。この目標を達成するためには、新しいインフラを多く構築する必要がある。
そして今回、再生可能エネルギー電力を世界的に送電網に供給するのに必要となる材料は、たとえ最も野心的な気候変動対策のシナリオだったとしても、地球上に十分に存在することが明らかになった。これらの材料を採掘・加工しても、地球温暖化を抑えるために掲げた目標温度を超えるだけの二酸化炭素を排出することはないという。
ただ、この良い知らせには裏がある。再生可能エネルギーのインフラを構築するために必要な材料は、しっかりと存在している。ところが、それらを実際に採掘し、加工するのが難しい。責任ある方法で実行されなければ、これらの材料を使用可能な状態にする過程で、環境破壊や人権侵害が起こる可能性があるからだ。
研究チームは、気候変動目標の達成に必要な材料について詳細に把握するため、低炭素電力の発電に必要とされる17種類の主要な物質について調査した。まず、クリーンなインフラを構築するために必要な各物質の量を推定した。そして、その各物質(もしくはその物質を製造するのに必要となる原材料)が地下資源としてどの程度利用可能かを表す推定値と比較した。地下資源には、経済的な観点から回収可能とされる地球上の全物質が含まれる。
再生可能テクノロジーの多くは、アルミニウム、セメント、鉄などを大量に必要とする。そして中には、特殊な材料を必要とするものもある。ソーラーパネルにはポリシリコンが使われ、風力タービンのブレード部分にはグラスファイバー、そしてモーター部分にはレアアースメタルが使われている。
必要となる材料は、どのような新しいインフラを、どれだけのスピードで構築するのかによって変わってくる。最 …
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