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中国テック事情:中国を出た記者がEC「爆買い」をやめた理由
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Why my bittersweet relationship with Shein had to end

中国テック事情:中国を出た記者がEC「爆買い」をやめた理由

世界的なEC大国・中国ではあらゆるものがネットで格安で手に入る。4年前に米国へ移住した記者は、ネットショッピングの習慣を見直すことにした。 by Zeyi Yang2023.01.31

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

私は最近、新年を迎えて少しばかり自分を見つめ直している。テクノロジー・ジャーナリストである私は、プライベートでもテクノロジー・プラットフォームを使っている。2022年は、ある甘くほろ苦い関係性について考えさせられる1年となった。そう、ネットショッピングとの関係性についてである。

4年前に米国に渡って以来、正直なところ私は中国でのネットショッピング体験が恋しくなっていた。私は、淘宝(タオバオ)という人気の電子商取引(EC)プラットフォームが日常生活の中心に浸透し始めた時期に中国で育った。生活必需品から高級品、ニッチな製品、ハンドメイド製品まで、どんな商品もタオバオでは必ず手に入り、しかも実店舗より格安ときた。そこはまさしくあらゆるものが揃う場所なのだ。

そんなわけで、ここ数年、米国でもシーイン(Shein)がメジャーになりつつあることを知って、最高! やっとタオバオの代わりが現れた! と思ったものだ。しかし、いつしか私は、どうしてこの類のショッピング体験を楽しいと感じるのか、ECプラットフォームが際限なく取引を提供する理由について疑問を持ち始めた。

移住前の2018年の夏、私はタオバオでスマホケースを5個購入した太平洋の向こう側では、スマホケースのような小物ははるかに高価だと聞いていたからだ。 

その選択は間違っていなかった。私は合計でおよそ15ドルを支払った。しかも、異なる4つの店舗からの送料込みの価格だ。米国で同じものを買おうとしたら、50ドルはゆうに超えるだろう。

それ以来、タオバオとの別れを辛く感じるようになった(アリエクスプレス=AliExpressという海外版も存在するが、使い勝手ははるかに悪い)。翌年には、中国からやって来る友人に頼み込んで貴重な荷物スペースを割いてもらい、追加でスマホケースを5個届けてもらった。もちろんいずれもタオバオで購入したものだ。だが、私は米国でのネットショッピングを通して、新たな現実を受け入れざるを得なくなった。商品の値段は高く、選択肢は少なく、発送に時間がかかるという現実だ。

タオバオは、アリババ、JD(京東商城)、ピンドゥオドゥオ(拼多多)といった中国の巨大ECプラットフォームの1つに過ぎない。これらの企業は、製造・輸送コストが安いという中国が持つ昔ながらの強みと、モバイル決済、レコメンド・アルゴリズム、ターゲット・マーケティングといった技術革新の目まぐるしい進化とを掛け合わせることで成長を遂げてきた。その結果、ECは中国がけん引する数兆ドル規模の市場となり、中国がイノベーションの先頭に立つ、世界でも数少ないテクノロジー産業の1つとなった。米国が追いつく日はやってくるのだろうかと言われるようになったわけだ。

そうした中、シーインが世間の注目を浴びるようになり、再び状況を一変させた。2008年に中国で設立されたシーインは、中国国外でも絶大な人気を獲得し、その評価額は約1000億ドルに上る。世界の若者たちの間では、ティックトック(TikTok)やユーチューブ(YouTube)のインフルエンサーたちによる「Shein haul(シーイン・ホール)」が流行っている。これは、何十着もの服や小物をまとめ買いし、ベッドの上にすべて投げ出してからカメラに向かって1つずつ試着し、紹介していくスタイルの動画を指す。山積みにされた大量の服と合計金額の安さのコントラストは、ソーシャルメディアで映えること間違いない。

 

私にとって響いたシーインのアピールポイントは、同じく中国出身で米国在住の友人から言われた、「タオバオと同じ匂いがする」という一言だった。それが決め手となった。

2021年8月、私は初めてシーインを試してみた。そこで購入したのは、やはりスマホケースだ。

私はスマホケース6個とワイヤレス・イヤホン・ケース1個を購入し、合計で12.50ドルを支払った。税と送料込みの価格だ。いずれもカラフルで遊び心があり、品質も悪くない。全ての商品を開封し終わった時、世界展開を目指す中国企業のおかげでやっと米国でも格安ショッピングができる方法を見つけた、と思ったものだ。

私のような中国から米国に移住したばかりの者にとって、シーインでのショッピングは、タオバオや中国のeコマース・システムの成分を微量に摂取するようなものなのだろう。厳密には、やはり違いはある。シーインは衣類や生活雑貨を扱うサイトとして知られているが、対してタオバオはより幅広い商品を扱っている。しかし、シーインにアクセスするたび、ふと馴染みのある世界に足を踏み入れた気がしていた。手頃な価格帯もそうだが、何十ページにもわたって商品が掲載され、なかなか最後までたどり着けないところもそうだ。一番割引率が高かったとか、一番売れているとかといった理由で、それほど好みでないスマホケースをいくつか購入してしまった。それに、たった2ドルの買い物だ。実際に手に取ってみたら気に入るかもしれない、と思ったのだ。

だが、しばらくして、目新しさと懐かしさという相反するようでそうでもない感情が薄れてくると、シーインでお買い得商品を検索しなくなった。実際には、それほど頻繁にスマホケースを交換したいとは思っていないことに気づいたのだ。そして、自分にこう問いかけるようになった。そんなにたくさんのスマホケースが本当に必要だったのか? それとも、安さや無限の選択肢がもたらす心地よさに釣られていただけだったのか?

最初の買い物からちょうど1年後、私はまたシーインで商品を購入した(8月というのはどうも私の購買欲をかき立てるらしい)。今回は、あえて新しい分野に挑戦し、食器収納ラック(3ドル)、当時トレンドだった愛猫用の七面鳥ハット(4ドル50セント)、シンク排水口フィルター(2ドル)などを購入した。最終的に14点で44ドルに達し、送料無料と15%割引が適用された。

最近になって注文履歴を確認し、購入した大半の商品についてすでに買ったことも忘れていたことに気づいた。シンク用フィルターは我が家のシンクにはまったく合わなかったし、我が家の愛猫は大人しく七面鳥ハットを被ってくれなかった。プラスチック製の食器ラックはあまりにも強度に欠けていた。だが、1点あたり数ドル程度しかかからないことを考えると、返品しようとは思わなかった。どれもきっと自宅の棚に仕舞われたままとなり、引越の日にゴミ箱行きになることだろう。

公正を期すために付け加えると、シーインの商品の中には非常に重宝しているものもある。たとえば、2ドルのナイロン製時計バンドは、私が持っているアップル・ウォッチの純正バンドやディスカウント・ストアの「ターゲット(Target)」で購入したはるかに高価なバンドよりも使い心地がいい。また個人的には、質よりも価格と量を選べるようにするべきだと考えている。プレミアム製品だけを買うように求めることは非現実的だし、上から目線に感じるだからだ)。

最終的に、私はシーイン的なプラットフォームが生み出す幻想から目を覚ますこととなった。こうしたプラットフォームが時々販売する信じられないほどのお買い得品をゲットするために、ユーザーは必要以上に、あるいは常識的な範囲を超えて、買い物をするように仕向けられているのだ。この幻想は長い間、私を含む大勢の人々の間で通用してきた。しかし、私が購入した商品が環境に与える影響や、プラットフォームが顧客の心理を利用してどんどん買わせるやり口を無視することはますます難しくなっている。

こうした意識の変化を経験しているのは、私だけではないだろう。社会は総じて、大量生産された安価な商品が気候に与える影響を認識する方向に、ゆっくりと、だが着実に移行しているように思う(さらに言えば、安価な労働力にまつわるコストについても、さらにゆっくりとだが認識されつつあるかもしれない)。このような議論は、中国国内ではそれほど広く活発になされてはいないが、タオバオやシーインのような企業は、自社のビジネスモデルがすべての人にとって持続可能なものなか、それともそれが自社にとってのみ旨味があるものなのか、という問いに否応なく答えなければならないだろう。この10年間、目を見張るスピードで成長してきた中国のEC業界は今、環境問題に対する世論の高まりだけでなく、不況の到来という経済的圧力とも闘わなければならない。この先、こうした企業はどこへ向かおうとしているのだろうか? EC業界は多くの自らの行為について、顧みなければならないだろう。

私もまた、自分自身の行為を反省しているところだ。

8月以降、私はシーインで買い物をしていない。また、競合プラットフォームであるティームー(Temu)もまだ試していない。ティームーもまた中国発で、基本的にシーインと同様の仕組みで人気を博しているプラットフォームだ(興味のある人は、10月に書いた記事を参照してほしい)。私の新年の抱負の1つは、消費主義の餌食にならないこと、そして安く手に入るという理由だけでモノを買うのをやめることだ。

今でも私の机の引き出しには、一度も使ったことのないスマホケースが10個以上、埃をかぶりながら眠っている。先日、地元の「バイ・ナッシング(無買)」フェイスブックグループで、近所の人がスマホケースを余分に持っている人を探していた。私は即座に「ある」とコメントを返した。彼女が受け取りに来たので、私は手持ちの中で最も見栄えのする5、6個を取り出した。

彼女は、「いや、1つだけいいのよ」と言った。私はこう返した。「どうぞ、全部もらってください。本当にお願いします。家にありすぎて困ってるんです」。

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中国企業の英語名の秘密

中国系企業がどのように英語名を付けているか、考えたことがあるだろうか? ピンウェスト(Pingwest)の最新記事は、翻訳がいかに芸術であるか、それにすべての企業が適切に翻訳しているわけではないと指摘している。中にはファーウェイのように、標準的な北京語の発音をローマ字表記することで最低限の対応をとる企業もある。だがその場合、他の言語を母国語とする人たちはまったく異なる発音で呼ぶようになる(正しくは、「ホワ・ウェイ」と発音する)。他の多くの企業では、会社名を設立した都市や省の名前から始めるという中国式の規則に従っているが、これはその他の国では一般的ではない。また、ローマ字表記にすると発音しにくいことを考慮して、ドローンメーカーのDJI(Da Jiang Innovationの略)のように、頭文字を採用する企業もある。

優れた名前は、中国語の名前をそのまま使うのではなく、発音しやすいように、また異なる文化圏で親しみやすいようにアレンジされていることがほとんどだ。その最たる例が、説明不要の「ティックトック」だろう。

あともう1つ

もし私がツイッターのスパムアカウントの大群を自由に使えたとしても、間違いなくこんなことには使わないだろう。香港在住のジャーナリスト、ティモシー・マクラフリンは、アジアの多くの国で祝われる「旧正月」を「春節」と呼ぶべきだとする、ディズニーランドのツイートに群がる多数のボット・アカウントを発見した。誰がこうしたボットを動かしているのかは不明だが、自分が親しんでいるものを何と呼ぼうと自由だろう。こんな些細な議論にスパム部隊を浪費することはないだろう。

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MITテクノロジーレビューで中国と東アジアのテクノロジーを担当する記者。MITテクノロジーレビュー入社以前は、プロトコル(Protocol)、レスト・オブ・ワールド(Rest of World)、コロンビア・ジャーナリズム・レビュー誌、サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙、日経アジア(NIKKEI Asia)などで執筆していた。
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