フラッシュ2023年1月12日
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チタンとバナジウムの中性子過剰同位体で新魔法数の消失を観測
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]高エネルギー加速器研究機構や理化学研究所(理研)などの国際共同研究チームは、理研の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」を用いて、中性子過剰なバナジウム(V)およびチタン(Ti)の同位体の高精度質量測定に成功。中性子数34という新魔法数がチタンとバナジウムの同位体において消失していることを見い出した。
原子核にはある特定の陽子数や中性子数で特に安定な原子核になる「魔法数(28、50、82など)」が存在する。さらに、近年の加速器の実験により、極端に中性子数が多いエキゾチック原子核(不安定核)を持つ同位体では「新魔法数(16、32、34など)」が出現することが分かってきた。
今回の研究は、RIBFの超伝導RIビーム生成分離装置(BigRIPS)で生成された高速RI(放射性同位元素)ビームが他の実験で使われた後のビームを用いた、共生実験として実施された。同ビームを低速RIビーム生成装置(SLOWRI)で減速してイオントラップに捕集し、多重反射型飛行時間測定式質量分光器(MRTOF)を用いて、中性子過剰なバナジウム、チタン同位体の高精度質量を測定。中性子数34という新魔法数がチタンとバナジウムの同位体において消失していることを突き止めた。
新魔法数34は、カルシウム(原子番号20)同位体で発見されており、それに近い陽子数のチタン(原子番号22)とバナジウム(原子番号23)の同位体でも存在可能性が示唆されていたが、それを覆す結果となった。エキゾチック原子核の質量を能率よく精密測定する今回の研究手法は、新魔法数の出現や消失の観測を通じて原子核構造のより深い理解につながることが期待される。
研究論文は、物理学の国際的な専門誌であるフィジカル・レビュー・レターズ(Physical Review Letters)に2023年1月5日付けで掲載された。
(中條)
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