あのツイートで始まった——
生きた歴史記録となった
ツイッターの代え難い価値
イーロン・マスクの買収後のツイッターで混乱が続いている。過去16年間、人類史上もっとも多くの世界の人々の声を記録してきたツイッターが消滅したとき、何が起こるのか。 by Chris Stokel-Walker2022.11.15
2006年に最初の「つぶやき」が投稿されて以来、ツイッターは世界の出来事において重要な役割を担ってきた。プラットフォームとしてのツイッターは、アラブの春から現在進行中のウクライナ戦争まで、あらゆるものの記録に使われてきた。また、長年にわたって公の場における人々の会話の記録もしてきた。
だが専門家は、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)がツイッターを崩壊に追い込んでしまったら、こうした連綿と紡いできたメディアとしての機能や会話が失われてしまうのではないかと心配している。11月10日の電話会議でマスクCEOが、ツイッターが倒産する可能性があると従業員に認めたことを考えると、現実的で現在進行中のリスクだと言える。
マスクCEO自身も、ツイッターは公に議論する場だと認めている。それゆえ、プラットフォーム喪失の可能性は非常に重大な意味を持つ。ツイッターは、今日の文明にとって不可欠なものになっている。戦争犯罪を記録し、重要な問題について議論し、ニュースを速報する場になっているからだ。
ツイッターは、ウサマ・ビン・ラディンを死に至らしめた米国の急襲作戦が最初に発表された場だった。ロシアのウクライナ侵攻に関する最新情報を入手する場でもある。さらに、2014年に起きたマレーシア航空MH17便撃墜事件が、ウクライナの親ロシア派の仕業かもしれないことが初めて表面化した場でもあった。ツイッターは生きた歴史記録だ。それがもうすぐ消滅してしまうとしたら、本当に深刻な問題なのだ。
シンクタンク・戦略ダイアログ研究所(ISD)のキアラン・オコナー上級アナリストは、「もしツイッターが『ある朝なくなる』としたら、残虐行為や戦争犯罪につながる直接的な証拠や、証拠となるかもしれないものはすべて、あっさり消えてしまうでしょう」と話す。オシント(OSINT:オープンソース・インテリジェンス)で収集された情報は、戦争犯罪の訴追を支援するために使われてきた。人々の記憶がとうに薄れてしまった後でも、出来事の記録として機能する。
オコナー上級アナリストの同僚でISDのエリス・トーマス上級オシント・アナリストは、ツイッター崩壊の可能性が重大な危機となる一因は、「デジタル公共広場」が(消失する可能性がある)いち私企業のサーバー上に構築されているからだと言う。これは、今後数十年間にわたって何度も対処しなければならない問題だとも話す。「今回は、その最初の大きな試練と言えるでしょう」。
いつでもどこでも利用できる利便性や、過去16年間で2億5000万人近いユーザーが利用してきた実績、それに事実上のネ …
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