フラッシュ2022年10月29日
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理研など、食欲を抑制して食べ過ぎを防ぐ神経回路を同定
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]理化学研究所(理研)、自治医科大学、福島県立医科大学の研究グループは、マウスを使った実験で食べ過ぎを防ぐ神経回路を同定した。食欲を抑制する神経回路については、ホルモンの一種であるオキシトシンが関係しているとされてきたが、詳しいことは分かっていなかった。
これまでの研究では、オキシトシン遺伝子やオキシトシン受容体遺伝子を無効にしたノックアウトマウスを使用していたが、摂食量に異常が発生していなかった。研究グループは、ノックアウトマウスでは、受精卵の時から遺伝子が働かないため、発生期にオキシトシンの欠損を補う補償機構が発達しているのでははないかと考えた。
そこで、今回の研究では特定の時期に特定の場所の遺伝子を無効にできるコンディショナル・ノックアウトマウスを使用した。成獣期に室傍核のオキシトシン神経細胞からオキシトシンの合成能を失わせたところ、マウスの体重が増加し、摂食量も増えることが分かった。しかし、視索上核のオキシトシン神経細胞で同じことをしても体重や摂食量は変化しなかった。
続いて、視床下部を前側と後側に分けて、それぞれの細胞のオキシトシン受容体を欠損させた。その結果、後側の視床下部でオキシトシン受容体を欠損させたときに体重と摂食量が増加した。詳しく調べると、視床下部の中でも弓状核のオキシトシン受容体を欠損させたときに体重と摂食量が増加することが分かった。
以上の結果から、室傍核のオキシトシン神経細胞が分泌したオキシトシンが弓状核のオキシトシン受容体と結合することで、摂食量が抑制され、体重が増加しにくくなることが分かった。
研究成果は10月25日、「イーライフ(eLife)」誌に掲載された。今後、マウスとヒトの共通点と違いを研究することで、ヒトの食欲を制御する神経回路が明らかになる可能性があるとしている。
(笹田)
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