主張:気候変動対策、現実直視でさらなる加速を
気候変動対策はここ数年で大きく進んだ。だが、世界各地を襲う自然災害は、私たちにもっとできることがあることを証明している。 by James Temple2022.10.23
この記事は、MITテクノロジーレビューが初めて開催した気候とエネルギーに関するカンファレンス「ClimateTech(クライメート・テック)」における、本誌エネルギー担当上級編集者ジェームズ・テンプルの講演を加筆したものだ。
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この数カ月、私たちは気候変動対策の驚くべき進歩と、解き放たれた恐ろしい兆しの両方を目の当たりにしてきた。
米国はついに気候行動におけるリーダーとしての道を歩み出し、気候変動とクリーン・エネルギー・テクノロジーに対して連邦政府として史上最大規模を投じる3つの主要な法律を制定した。風力発電や太陽光発電の開発、電気自動車の販売、バッテリー製造、そして二酸化炭素の回収、吸収、貯留の新たな手段に対して、数千億ドル規模の連邦補助金、融資、調達支援、税額控除を活用することになる。
一方で、いまや競争力のある主要な選択肢となり、市場シェアを拡大しているのが、再生可能エネルギー、電気自動車、代替肉だ。この10年で大規模なソーラー・ファーム(太陽光発電所)の建設コストは、80%以上も下がった。大量のガソリンを消費していたフォードのピックアップ・トラック「F-150」は、今や「F-150 ライトニング(F-150 Lightning)」という電気自動車に生まれ変わった。バーガーキングのメニューには、植物由来の代替肉を使った「インポッシブル・ワッパー」もある。
たくさんの企業が数十年以内に気候汚染物質の排出をゼロにすることを約束し、かなりの企業が順調な進展を見せている。さまざまな企業が、セメント、肥料、鉄鋼、化学製品の生産のため、これまで以上に持続可能な方法を開発している。ベンチャー投資家もまた、気候テック分野に数十億ドルを投資している。
米国だけではない。他の多くの国も同様に、気候変動対策の目標を掲げている。欧州連合(EU)は2021年、二酸化炭素排出量を2030年までに55%削減すること、2050年までに「気候中立」になることを加盟国に義務付ける法律を制定した。中国、ロシア、サウジアラビアは、2060年までにカーボン・ニュートラル(炭素中立)またはゼロ・エミッション(排出ゼロ)を達成することを約束している。インドは2070年までの達成を約束している。
すべての国がパリ協定に基づいたコミットメントを達成した場合でも、世界の気温は1800年代後半に比べて約2.4℃上昇すると推定されている。
中には過激な意見だが、今世紀中に4℃以上の上昇に向かって突き進んでいると警告する科学者もいる。
こうしたことは、私がMITテクノロジーレビューで気候とエネルギー分野を担当してきたわずか6年の間に起きた劇的な変化だ。しかし、石炭への依存が激減し、再生可能エネルギーへの期待が高まり、各国が多くの気候政策を制定するにつれ、最悪のシナリオは避けられるのではないかとまで思われるようになった。これは非常に良いニュースだ。
悲劇的な遅さ
しかし、他の多くの点において、悲惨なほど、破壊的なほど、そして容赦ならないほど遅れ始めている。私たちは将来のためにと、さらに迅速な進歩 …
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