東芝の原子力事業崩壊は
米国の原子炉新設と
研究開発への大打撃になる
東芝の原子力事業の崩壊は、世界的な原子力産業の衰退の一部でもあり、一方で温室効果ガス排出量を削減させる現実的な手段が取りにくくなれば、地球温暖化対策の失敗は必至だ。 by James Temple2017.02.18
債務超過に陥る可能性がある東芝が原子力発電所の建設事業から撤退すれば、苦境にあえぐ原子力業界にとって大打撃であり、最先端の原子炉設計の研究や新規開発が不可能になりかねない。
2006年にウェスティングハウス・エレクトリック(本社ピッツバーグ)の過半数の株式を54億ドルで取得したとき、総合電機メーカーの東芝(本社東京)は安全で小型、安価な次世代発電所事業を立ち上げ、効率を極めた商用原子炉を展開しようと大きな期待を抱いていた。米国で新設される原子炉は、ウェスティングハウスが現在建設中の4基の商用炉だけだ。しかし、ウェスティングハウスはコスト超過や技術上のトラブル、請負業者との衝突、規制面での課題に悩まされ、プロジェクトは何年も遅れている。
2月14日、東芝は原子力部門で7125億円の損失があるとの見通しを明らかにし、ウェスティングハウス株を売却する方針を発表した。マサチューセッツ工科大学(MIT)のマイケル・ゴレイ教授(原子力科学工学)は「当時は素晴らしい取引のように見えましたが、ガラクタに過ぎないことが判明したのです。今回の件で、原子力産業には極めて大きな萎縮効果がありそうです」という。
米国南部で現在建設中の東芝の大規模原子力発電所4箇所(8基)は、簡単な設計の加圧水型原子炉AP1000型であり、すぐに建設できると思われた。しかし、ジョージア州の「ボーグル」プロジェクトとサウスカロライナ州の「バージル・C・サマー」プロジェクトは、どちらも予定より約3年遅れ …
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