この熱波は地球温暖化のせい?気候変動を巡る5つの問いに答える
今年の夏、欧州は記録的な熱波に襲われている。この現象は地球温暖化の影響によるものなのだろうか? もしそうであるのなら、気候変動は科学者たちの予想を上回るペースで進行しているということだろうか? by James Temple2022.07.27
この夏、何百万人もの人々が気候変動の影響を直接体験している。世界中で記録的な熱波が発生し、作物を焦がし、停電や山火事を引き起こし、道路や滑走路を寸断し、欧州だけでも何百人もの命が奪われた。
気候変動が、抽象的な脅威から、気温の記録更新、大規模な干ばつ、山火事の蔓延へと急ピッチで変わっていくことで、気候変動は科学者の予想よりも速いペースで進行しているのではないか? と多くの人が疑問に思っている。現在の大気中の温室効果ガスのレベルを考えると、これらの異常気象は研究者の予想を上回るスピードで進行しているのだろうか?
しかし、これらは2つの異なる質問であり、それぞれ微妙に異なる回答がある。
大気中の温室効果ガス濃度の上昇に対する地球の反応をシミュレートするために使用されるコンピューター・モデルは、地域的な極端な気温を予測するためのものではない。そのことを考慮すると、ほとんどの場合、大きく外れることはないだろう。しかし近年の熱波によって一部の科学者は、そのような現象の頻度と強度をモデルが過小評価している可能性について疑問を抱いている。一部の要因が特定のモデルよりも重要な役割を果たしており、そしてこれらすべてが今後数十年の気候条件に与える影響について考えるようになっている。
問題の要点ごとに考えていこう。
1. この熱波は、気候変動の影響によるところが大きいのだろうか?
答えは「そのとおり」。地球温暖化によって夏の気温の基準値が高くなり、熱波がより頻繁に、より極端に、より長く続く確率が劇的に高くなったことは、研究につぐ研究につぐ研究で明らかになっている。
ワールド・ウェザー・アトリビューション(World Weather Attribution)の共同リーダーであるフリードリッヒ・オットー博士は、ここ数日の欧州全土における前例のない気温について、「気候変動が今回のあらゆる熱波の原因であり、この熱波を引き起こしています」と述べた。「以前は滅多になかった熱波が、今では一般的になっています。かつてはあり得なかった熱波が発生し、人々を死に追いやっているのです」。
2. 気候変動は科学者の予想よりも速いペースで進行しているのだろうか?
広い意味では「いいえ」である。実際、温室効果ガスの濃度と地球の平均気温が緊密に連動して上昇する現象は、1970年代以降の現在よりも大雑把な気候シミュレーションまで遡っても、モデルによる予測の範囲内に留まっている。
観測された気温が、予測された上昇にどれほど一致しているかを強調している研究者は何人もおり、そうした研究は何件もある。最新の国連気候報告書もその1つであり、その類似性は異様なほどだ(まるで、数十年前に世界が気候科学者の警告に耳を傾けるべきだったかのようだ)。
ジーク・ハウスファーザー博士やケイト・マーベ …
- 人気の記事ランキング
-
- Google DeepMind has a new way to look inside an AI’s “mind” AIの「頭の中」で何が起きているのか? ディープマインドが新ツール
- Google DeepMind has a new way to look inside an AI’s “mind” AIの「頭の中」で何が起きているのか? ディープマインドが新ツール
- How this grassroots effort could make AI voices more diverse 世界中の「声」を AIに、180言語を集める草の根プロジェクト
- Who’s to blame for climate change? It’s surprisingly complicated. CO2排出「責任論」、単一指標では語れない複雑な現実