藤木庄五郎:生物多様性の保全とビジネスの両立を目指す起業家
ゲーム感覚で生物多様性の保全に参加できるスマホアプリを開発した起業家、バイオームの藤木庄五郎。「環境を守ることが、利益を生むことにつながらなければなりません」と語る藤木が目指す世界とは。 by MIT Technology Review Japan2022.03.21
藤木庄五郎は1988年に大阪で生まれた。自然が好きで川や池での釣りに夢中だった少年時代、藤木はちょっとした“違和感”を抱いていた。その違和感こそが、藤木が現在展開している生物多様性の保全を目的とした事業へとつながっている。
- この記事はマガジン「世界を変えるイノベーター50人」に収録されています。 マガジンの紹介
「池に行っても釣れるのはブラックバスやブルーギルなどの外来種ばかりで、フナなどはまったく釣れない。当時は小学生なりに本などを読み漁って勉強し、日本の生態系が外来生物に取って代わりつつある状況に強い衝撃を受けたんです」
藤木が読んだ本の中には「死の土地」と呼ばれた砂漠化地域の緑化に尽力した農学者・遠山柾雄(元鳥取大学助教授)の著作『世界の砂漠を緑に』(講談社刊)も含まれていた。生態学の研究者になることを志した藤木は、京都大学農学部へと進学する。
在学中に調査に訪れた東南アジアのボルネオ島の熱帯雨林で2年以上にわたるキャンプ生活を送り、商業用のオイルパーム(アブラヤシ)が地平線まで広がる光景など、大規模な森林破壊の現実を目の当たりにする。
「生態学の中でも、人工衛星やドローンなどから得られる画像情報と樹木の群集パターンを組み合わせて、生物多様性を広域に可視化するリモートセンシングの技術開発をしていました。現地調査をしていると地平線まで熱帯林が伐採されている場所もあって、このような膨大なエネルギーがどこからもたらされているのかを考えるようになりました」
藤木が環境破壊の最前線でたどり着いた答えは、経済活動というエネルギー。「お金を儲ける」というシンプルで根源的な欲望と技術が組み合わさることで、目の前の惨状が引き起こされていることを強く認識した。
「この経済のエネルギーの存在を無視して大規模な環境保全を進めるのは現実的ではないと痛感しました。むしろ、この強力かつ本質的なエネルギーを利用しなければ、地球環境を守ることにはつながらないのだと」
ボランティア活動や企業のCSRの文脈で捉えられることの多かった従来の「エコロジー」運動の反省を踏まえ、昨今、注目されているSDGs(持続可能な開発目標)では、本業での取り組みが重要とされる。17あるSDGsの目標では「持続的な経済成長」や「生物多様性の保全」が掲げられており、これらの目標を統合的に解決していくことが求めら
れる。
「環境を守ることが、利益を生むことにつながらなければなりません。当時はそのような視点を持つ企業はあまり多くなかったので、それを実現するための新しいビジネスモデルを作り出すことが、世の中に対して最もインパクトを与えられると考えました」
京都大学大学院で博士号(農学)を取得した藤木だが、自身の理念を実現するにはビジネスとしての活動が必要と考えるようになり、研究職ではなく起業の道を選ぶことになる。創業した会社の名前は、生態学で動物、植物、土壌生物の類型を意味する「バイオーム(生物群系)」である。
「ビジネスとして成立させるからには、きちんと儲けを出せる仕組みが必要です。しかし、生物多様性は定量化すらうまくいっておらず、二酸化炭素の排出権取引のようなビジネスをしようにも、そのための土台もありませんでした。そこで考えたのが、さまざまな地域に生息する生物の分布をデータ化し、どの企業や組織からもアクセスできる生物多様性のデータ・プラットフォームを構築することでした」
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