盛り上がるeサイクリング、「お隣さん」が世界王者になる?
パンデミックを機に、バーチャル世界でのサイクリングレースがブームになっている。eサイクリングのトップライダーたちは現在、2月26日に開催される第2回目の世界選手権に向けて準備を進めている。アパートの部屋で一人孤独に、懸命に漕ぐ選手が世界王者になるかもしれない。 by Chris Baraniuk2022.01.11
来月末、メーガン・イースラーは窓際に扇風機を立てかけ、アイオワ州デモインにある自宅アパートに2月の冷たい空気を送り込んでいることだろう。 サイクリングキットの中には、タイツに氷を目一杯詰めた、保冷パックを用意しているはずだ。
そして、猛烈にペダルを漕いでいるだろう。
イースラーは、2月26日に開催される「国際自転車競技連合(UCI)サイクリングeスポーツ世界選手権」で、世界中から集まったeサイクリスト数十名と競い合う。この選手権は、2020年に開催された第1回大会に続く第2回目の大会で、eサイクリング・プラットフォームである「ズイフト(Zwift)」上で開催される。ビデオゲームのような環境で、未来のマンハッタンを模したコースを走行する予定だ。全部で女性100人、男性100人の選手がリモートでレースに参加する。各選手が固定式自転車を懸命に漕ぐのに合わせて、画面上のアバターが特設コースの曲がりくねった道をたどって疾走する。
日頃は研究所の助手として働くイースラーは、米国でも有数のeサイクリストであり、最近、USAサイクリングの世界選手権への派遣選手を決めるオンライン予選を通過した。レース開催中、友人や家族を応援のために自宅に呼ぶかどうかは、まだ決めていないそうだ。
「自宅アパートで一人孤独に、懸命に漕ぐことになるしれません」とイースラーは言う。
ロックダウンや渡航制限が、パンデミックの状況下でのeサイクリングの人気を後押ししている。「ペロトン(Peloton)」や「ワフー(Wahoo)」といったeサイクリング・プラットフォームのユーザー数は急増しており、ズイフトも例外ではない。ズイフトは現在のアクティブユーザー数を公開していないが、現在までに累計で約400万人のズイフト・アカウントが有効化されており、ユーザーベースは昨年だけで2倍以上に増えたと述べている。
ズイフトの創業者たちは、やがては、この新たな競技サイクリングがいつかオリンピックの舞台に登場することを願っている。そしてその夢は、オリンピックの自転車競技を主催するUCIが支持を表明すれば、現実のものとなる可能性がある。すでに物事がこうした方向に進んでいることは間違いない。2021年6月、ズイフトは国際オリンピック委員会(IOC)が設立した新たな大会「オリンピック・バーチャルシリーズ」に初めて参加した。そして、eサイクリングが他のトップ選手によるトラックレースと異なる点は、誰でも比較的簡単に参加できることだ。
「世界中のどこからでも、だれでも、自宅にいながらにして、出場資格取得プロセスに参加できます」。ズイフトの戦略担当役員であるショーン・パリーはそう述べる。
ランキング上位を目指して
こうした経緯で、イースラーは代表として選ばれた。全米のユーザーを対象とした予選会では落選したが、別の予選プロセスを経て米国代表の座を射止めた。イースラーはまったくの初心者ではない。学生時代にはトライアスロン競技に出場してきた。しかし、室内サイクルトレーナーに乗り、バーチャルレースに参加すると、アドレナリンがほとばしるのを感じるという。
イースラーや今回の世界大会に出場する他の選手は、皆、同じスマートトレーナーを受け取ることになる。このデバイスは、固定式自転車の後輪に付け替えて使うもので、バーチャルにおいて公平な条件下で競い合うことを可能にする。スマートトレーナーは、ズイフトのコース上のバーチャルロードの路面状態に合わせて、自動で抵抗を増減させる。石畳を再現することも可能だ。
ズイフトのようなプラットフォームではデータが大きな役割を果たすが、自らのパフォーマンスを常にチェックしているライダーも多い。レース中、画面上には、心拍数、スピード、ワット出力などの統計データが常に表示される。解説者は、これらの統計データの一部をその場でピックアップし、個々の選手のがんばり具合を観衆に伝えることができる。
例えばイースラーは、心 …
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