「数理に基づく真に公平な社会の実現を目指す」NII 五十嵐歩美
MITテクノロジーレビュー主催の「Innovators Under 35 Japan Summit 2021」から、国立情報学研究所の五十嵐歩美氏のプレゼンテーションの内容を要約して紹介する。 by Koichi Motoda2021.12.28
MITテクノロジーレビューは12月16日、「Innovators Under 35 Japan Summit 2021」を開催した。Innovators Under 35は、世界的な課題解決に取り組む若きイノベーターの発掘、支援を目的とするアワード。昨年に続き2 回目の開催となる本年度は、35歳未満の起業家や研究者、活動家など15名のイノベーターを選出した。
その受賞者が集う本サミットでは、各受賞者が自らの取り組みへ対する思いや、今後の抱負を3分間で語った。プレゼンテーションの内容を要約して紹介する。
五十嵐歩美(国立情報学研究所)
丸いケーキを、誰もが満足するように公平に分けるにはどうすればよいでしょうか。私たちの社会ではケーキだけでなく、仕事や家事の分担、食料や医療物資の分配など、さまざまな場面で何かを公平に分けなければならない状況に遭遇します。とはいえ、何が公平かは人によって異なり、何らかのモノやコトを、公平にすべての人が満足するように分けるのは簡単なことではありません。
そこで、公平性という概念を数学的に定義し、できるだけ公平性を担保しながらすべての人を満足させる資源配分メカニズムを解析するのが「公平分割理論」です。そこでは、財産やモノを完全に公平に配分することは難しいので、近似的にできるだけ公平にすることが課題になっています。とはいえ、公平性だけを満たしても、みんなが満足するとは限りません。例えば、何も配分しないこともある意味公平ですが、それでは意味がありません。
私は、どのように複数の資源を公平に配分すればよいのかを研究しています。近年、さまざまな意思決定手法の公平性、透明性が求められていますが、私は数理に基づいたより透明性の高い手法によって、真に公平な社会の実現を目指していきたいと思います。
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- 元田光一 [Koichi Motoda]日本版 ライター
- サイエンスライター。日本ソフトバンク(現ソフトバンク)でソフトウェアのマニュアル制作に携わった後、理工学系出版社オーム社にて書籍の編集、月刊誌の取材・執筆の経験を積む。現在、ICTからエレクトロニクス、AI、ロボット、地球環境、素粒子物理学まで、幅広い分野で「難しい専門知識をだれでもが理解できるように解説するエキスパート」として活躍。