忘れられた再エネ「地熱」、米インフラ投資で汚名返上なるか?
米国のインフラ法案により資金提供を受けた4基の新しい実証プラントは、「忘れられた再生可能エネルギー」と揶揄されている地熱による発電の普及を後押しする可能性がある。 by Casey Crownhart2021.12.15
地球の内部には、世界の総エネルギー需要の2倍を満たす熱が流れている。しかし、この熱を利用するには地中深くまで掘り下げ、利用可能なエネルギーに変換する必要がある。それは困難で費用がかさむため、時に「忘れられた再生可能エネルギー」とも呼ばれる地熱は、世界の発電量の約0.3%しか占めていない。
- この記事はマガジン「脱炭素イノベーション」に収録されています。 マガジンの紹介
しかし、今、地熱に追い風が吹いている。先日可決された米国のインフラ法案で、米国エネルギー省は地熱増産システム(EGS:Enhanced Geothermal Systems)のテクノロジーを試験するため、4基の実証プラントの建設資金8400万ドルを計上した。
この資金は、インフラ法案でDOEに割り当てられた予算620億ドルからすればごくわずかだ。予算はほかに、長距離送電線の建設、蓄電池のサプライチェーンの強化、原子力発電所の維持などに使われる。しかし、地熱の研究者らは、限られた資金でもEGSの商業利用への移行を支援するのに、大いに役立つ可能性があると話す。
EGSのスタートアップ企業「ファーボ(Fervo)」の創業者、ティム・ラティマー最高経営責任者(CEO)は、「地熱は今まさに、その時が来たのです」と言う。
地熱の魅力は安定性だ。天候や時間帯によって発電量が変化する風力や太陽光に対して、地熱は常時発電できるため、安定した電力源となる。
「地熱は、ベースロード電源(安価で24時間安定的に発電できる電源)になり得る、唯一の再生可能エネルギーです」と国立再生可能エネルギー研究所(National Renewable Energy Laboratory)のジョディ・ロビンズ(地熱技術者)は言う。原子力(カーボンフリーだが再生可能ではない)も同様の役割を果たせるが、コストや廃棄物の問題、世間一般のイメージによって、その拡大は制限されている。
米国の現在の地熱発電所は、1970年代から稼働している。地熱発電所は、一般的にポンプで地下から高温の水や蒸気を地表に汲み上げ、タービンを回して発電する。その後、地下の圧力を維持するために汲み上げた水をポンプで戻し、プロセスを循環させる。
地熱を利用できる主要な場所には、いくつかの共通点がある。熱、亀裂のある岩盤、地下水、それらが互いに近く、地表から数キロメートル以内に存在することだ。しかし …
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