KADOKAWA Technology Review
×
始めるならこの春から!年間サブスク20%オフのお得な【春割】実施中
アリババ会長も推奨「996」長時間労働に中国テック系社員が反旗
Ms Tech | Getty
人間とテクノロジー 無料会員限定
China’s burned-out tech workers are fighting back against long hours

アリババ会長も推奨「996」長時間労働に中国テック系社員が反旗

中国企業は長きにわたり、競争における優位性という名のもとに、長時間労働を是認し、美化し、強制してきた。しかし最近になり、午前9時から午後9時まで週6日働くことを意味する「996」制度に対し、抵抗の声を上げるテック企業の労働者たちが相次いでいる。 by Siyuan Meng2021.11.18

労働者が午前9時から午後9時まで、週6日働くことを期待して名付けられた「996」という殺人的な就労制度は、国民から抗議の声が出続けているにも関わらず、長年、中国の企業にはびこってきた。アリババの共同創業者であるジャック・マーでさえ、この慣行をかつて「大きな恵み」と呼んだことがある。

今年10月初旬、この流れが変わり始めたかのように思われた。8月、中国政府による監督が強化されたという希望的な兆候が見られた後、4人の果敢なテック労働者がソーシャルメディアで、中国の労働文化における問題を明らかにするためのプロジェクトを開始したのだ。企業の慣行をまとめた、誰でも自由に編集可能なデータベースの話はすぐに広まり、ハイテク分野の多くの企業における労働環境を明らかにし、世間の注目を996制度に集めるのに役立った。 データベースを公開した最初の1週間で100万回の閲覧数を記録した。

ところが、最初に「労働者の命は大切だ(Worker Lives Matter)」と名付けられ、次に「労働時間(Working Time)」というタイトルに変更されたこのプロジェクトは、登場したのと同じような素早さで姿を消すことになった。データベースとギットハブ(GitHub)のリポジトリページは削除され、プロジェクトに関するオンラインでの議論は中国のソーシャルネットワーク・プラットフォームの検閲を受けることになった。

時間外労働は中国において、法律上は違法でありながら実際には盛んに実施されている。ギットハブの「労働時間」プロジェクトが短命だったのは、時間外労働という慣行に抵抗する活動の難しさを浮き彫りにしている。しかし、それでも996問題に取り組む匿名制プロジェクトは無くならないと考える者もいる。「私は、そうした試みや取り組みが今後ますます実施されるようになると思っています」。そう語るのは、996に反対する別のプロジェクトに携わってきたプログラマーのスージー・ヤンだ。検閲を回避するうまい方法があれば、996問題により多くの注目を集められるだろうとヤンは言う。

勤務時間を調査する

ギットハブにおける「労働時間」プロジェクトは、グーグル・ドキュメントの中国版であるテンセント・ドキュメント(Tencent Docs)に公開されたスプレッドシートとして始まった。公開後すぐに、アリババや中国語のインターネット検索プロバイダーのバイドゥ(百度)、そして電子商取引企業のJD.com(京東商城)の項目への書き込みがあった。

「午前9時から午後10時30分あるいは午後11時までの週6日勤務で、部長クラスはたいてい、午前0時を過ぎてから帰宅しています」。テック企業大手のファーウェイ(Huawei)に関連する項目にはそうした書き込みもあった。

「午前10時から午後9時 (ただ、勤務終了時間は午後9時ですが、私たちの部署は午後9時半や午後10時くらいまで会社にいます。「内巻」のせいです)」と記されていた欄もあった。「内巻」というのは、不合理な内部競争を意味する中国のインターネット・スラングである。

3日間で1000件以上もの書き込みがあった「労働時間」プロジェクトは数日後、中国版のクオーラ(Quora)ともいうべき中国のオンラインフォーラム「知乎(Zhihu)」のトレンド・トピックのトップに躍り出た。

同プロジェクトのスプレッドシートが大きくなり、大衆の耳目を集める中、プロジェクト主催者の1人である「秃头才能变强(「禿げることによってのみあなたは強くなる」の意) 」という名のユーザ …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中!年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
  1. Promotion MITTR Emerging Technology Nite #32 Plus 中国AIをテーマに、MITTR「生成AI革命4」開催のご案内
  2. AI companions are the final stage of digital addiction, and lawmakers are taking aim SNS超える中毒性、「AIコンパニオン」に安全対策求める声
  3. This Texas chemical plant could get its own nuclear reactors 化学工場に小型原子炉、ダウ・ケミカルらが初の敷地内設置を申請
  4. Tariffs are bad news for batteries トランプ関税で米電池産業に大打撃、主要部品の大半は中国製
▼Promotion
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る