主張:専門知識を欠くインフルエンサーをZ世代が盲信してしまう理由
デジタル・リテラシーが高いはずの若者がインフルエンサーに騙されてしまうのはなぜなのか。情報を発信した人物と、自分自身とのアイデンティティが共通していると、たとえその情報が疑わしいものだとしても信じてしまう傾向があるという。 by Jennifer Neda John2021.08.16
10代の少女が深刻な顔でカメラを見つめる。彼女が自分の顔に向けたスマートフォンの角度を変えると、画面が揺れる。彼女が着ているパーカーに重ねて表示された字幕には、不吉な警告が書かれている。「もしジョー・バイデンが米国大統領に選ばれたら、『トランプ主義者』たちがLGBTや有色人種の人々を大量殺戮するだろう」。続く字幕は「これは第三次世界大戦だ」と宣言している。この動画は2020年11月2日にティックトック (TikTok)に投稿され、2万回以上の「いいね」が付いた。当時、他にも数多くの若者たちがソーシャルメディアで同様の警告を発していた。投稿の再生回数は数十万回に上り、数多くのいいね!やコメントが付いた。
実際にはこれらの主張は明らかな誤りだった。ではなぜ、上の世代よりもデジタルに詳しいとされる多くのZ世代(だいたい9~24歳が当てはまる)が、このようなひどい偽情報に引っかかってしまったのだろうか?
私は昨年の夏からスタンフォード大学インターネット観測所の研究助手として、誤情報の拡散について分析してきた。ソーシャルメディアに国外から影響を及ぼそうとする活動を研究し、2020年の大統領選挙と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンに関する誤情報がいかに猛威を振るったかを検証してきた。そこで分かったのは、若者は最初に誤情報を発信した人物と自分自身の間にアイデンティティ上の共通点があると感じると、上の世代よりも誤情報を信じてしまい、それを広める傾向が強いということだった。
オフラインの場なら、誰の主張を信用し、誰の言い分を無視あるいは疑うべきか判断する材料として、10代の若者たちは自分が属するコミュニティのコンテキストを活用する可能性が高い。長年にわたる共通する体験を通して育まれてきた社会的な繋がりや個人の評判は、10代の若者たちにとって非常に重要なものだ。何らかの出来事 …
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