KADOKAWA Technology Review
×
主張:テック業界はもっと女性の声を聞くべきだ
Ms Tech
コンピューティング 無料会員限定
The voices of women in tech are still being erased

主張:テック業界はもっと女性の声を聞くべきだ

コンピューター業界において、女性の功績はこれまで不当に低く評価されてきた。女性は、話を聞いてもらえることより沈黙させられることがほとんどで、それは現在でも変わっていない。 by Mar Hicks2021.08.06

5月24日の真夜中に、ティックトック(TikTok)は音声を変えた。ちょっと堅苦しいロボットのような抑揚で映像のテキストを読み上げる、どこにでもいるような女性の声は、ほとんど小馬鹿にしたような陽気な調子の声に、突如として置き換わったのだ。多くのユーザーは新しい声を「不気味の谷の少女」と呼んで不快感を表し始めた。リル・ナズ・Xはこれを題材にティックトック映像も作った。

だが以前の声はどうなったのだろう? その声を提供した女性は誰だったのだろう?

コンピューティングで女性のことを考えるとき、たいていは文字どおりにも比喩的にも、話を聞いてもらえたことより沈黙させられたことの方を思い浮かべる。コンピューティングの歴史を通じ、女性の声と身体は発射秒読みの声から写真に写った姿まで、あらゆるところに見られる。だが、このような女性が何をしたのかを歴史家が物語の中で説明するようになったのは比較的最近のことだ。コンピューターを実際にプログラムしたのが女性であることが多いにもかかわらず、女性はコンピューティングの歴史には重要でないと、長らく誤解されていた。

そして今も変わらないのは、女性の声をテック製品の一部として聞くとき、それが誰の声なのか、あるいは、実在の人物かどうかさえ分からないということである。実在の人物だとしても、自分の声がそのように使われることをその人が承諾したかどうか分からない。ティックトック・ユーザーの多くは、自分の聞いたテキスト読み上げ音声は実在の人物ではないと思い込んでいた。だがその人は実在していた。その声はベブ・スタンディングというカナダ人の声優のもので、スタンディングはティックトックを所有するバイトダンス(ByteDance)に声の使用を許可していなかった。

スタンディングは5月に、自分の声の使われ方、特にユーザーが下品な言葉でも何でも言わせられるという使われ方が、自分のブランドと生計を立てる能力を損なったとしてバイトダンスを訴えた。スタンディングの声は、望めば何でも言わせることができる「ティックトックのあの声」として知られるようになり、有名にはなったものの報酬はなく、声で仕事をする能力を傷つけられたとスタンディングは申し立てた。

その後、ティックトックが突如スタンディングの声を削除したとき、スタンディングは一般の人と同じようにしてそのことを知った。声が変わったと聞き、それを伝える記事を目にしたのだ(ティックトックは声の変更について報道機関にコメントしていない)。

アップルの「シリ(Siri)」に詳しい人はちょっ …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る