KADOKAWA Technology Review
×
NASAが被曝線量制限の緩和を検討、女性宇宙飛行士の機会開く
NASA
宇宙 無料会員限定
New NASA radiation rules could open up space missions to more women

NASAが被曝線量制限の緩和を検討、女性宇宙飛行士の機会開く

全米アカデミーがNASAに提出した報告書は、宇宙飛行士の放射線被曝線量の新基準を提案している。背景には、NASAの月や火星への新しいミッションに、女性飛行士を参加させたいという強い願いがある。 by Neel V. Patel2021.07.20

私たちは、宇宙を飛び交う放射線の多くから地球の磁場によって守られている。だから地球上の人間が放射線に曝されることは多くはない。年間被曝線量は3〜4ミリシーベルト(mSv)にとどまっている。一方、国際宇宙ステーション(ISS)に180日間滞在する宇宙飛行士の被曝線量は、50〜180ミリシーベルトにも達する。

放射線が人間に与える影響は、性別をはじめとするさまざまな要因によって異なるが、放射線被曝は乳がん、卵巣がん、および子宮がんなどのリスクを高めるとされる。

現在の米国航空宇宙局(NASA)の基準(主に日本の原爆被曝者の研究によって得られたモデルに基づく)では、宇宙飛行士は、致命的ながんを発症する過剰生涯リスクが3%未満である限り、ミッションを遂行できるとされている。これは、100人の宇宙飛行士が同じ期間宇宙に滞在したとして、宇宙放射線によって誘発されたがんで死亡する確率が高いのは3人だけということだ。基準の下限値である30歳女性の場合、宇宙飛行士のキャリアを通じて最大180ミリシーベルト未満しか放射線被曝は許されず、上限値である60歳の男性宇宙飛行士の場合は最大700ミリシーベルトまで耐えられることを意味している。

これらの基準は10年以上変更されていないが、現在、NASAはこの基準を廃止し、統一的な基準に変更することを検討している。6月24日に発表された全米アカデミーズの報告書は、NASAの全宇宙飛行士に対して、キャリア期間中の被曝量の上限を性別や年齢に関係なく600ミリシーベルトに設定すること推奨している。この新しい制限値が採用されれば、すべての年齢の女性に、これまで参加できなかった長期ミッションに加わるチャンスがより多く与えられることになる。

全米アカデミーズに調査を委託したNASAには、放射線基準を更新したい十分な理由がある。NASAは宇宙飛行士を早ければ2024年にも再び月に、そして最終的には火星に送り出したいと考えて …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
  2. This AI-generated Minecraft may represent the future of real-time video generation AIがリアルタイムで作り出す、驚きのマイクラ風生成動画
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る