鉱物でCO2を除去するスタートアップが資金調達 買い手も決まる
エアルーム・カーボン・テクノロジーズは、大気中の二酸化炭素除去に鉱物を応用する技術を開発している。現在のところ、この技術を利用するには高いコストがかかるが、最終的には1トンあたり50ドルで二酸化炭素を除去できるという。目標は、2035年までに年間10億トンの二酸化炭素を除去することだ。 by James Temple2021.06.01
鉱物(ミネラル)を利用して空気中から二酸化炭素を除去するスタートアップ企業が登場した。気候変動を遅らせるために、「風化促進法(enhanced weathering)」と呼ばれる手法を展開する最初期の商業的取り組みのうちの一つだ。
- この記事はマガジン「脱炭素イノベーション」に収録されています。 マガジンの紹介
「エアルーム・カーボン・テクノロジーズ(Heirloom Carbon Technologies)」は、同社の技術が商業規模にまで成長すれば、1トン当たり50ドルで二酸化炭素(CO2)を大気から除去できるという。この価格は、他の産業的手法の見積もりをはるかに下回る。同社の目標は、気候変動を激化させる主要な温室効果ガスを2035年までに10億トン除去することだ。
サンフランシスコを拠点とする同社は、5月26日、ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ(Breakthrough Energy Ventures)、ローワーカーボン・キャピタル(Lowercarbon Capital)、プレリュード・ベンチャーズ(Prelude Ventures)などの主要投資家から非公開のシードマネー(創業資金)を調達したと発表した(業界筋によると、調達額は数百万ドル規模だという)。
さらに、炭素除去実証プロジェクトに資金提供してきた決済代行会社のストライプ(Stripe)は、エアルーム・カーボン・テクノロジーズに250トン弱の二酸化炭素を除去してもらう計画を発表する予定だ。価格は1トンあたり2054ドルを予定している。
二酸化炭素の除去と再利用を提唱する調査会社「カーボン180」のノア・ダイチ社長によると、エアルーム・カーボン・テクノロジーズは二酸化炭素除去分野の中心的な難題に対処する助けとなる可能性があるという。難題とは、二酸化炭素除去技術がコストがかかりすぎるか、あるいは信頼性や耐久性に疑問符が付くというものだ。「クライムワークス(Climeworks)」や「カーボン・エンジニアリング(Carbon Engineering)」などの企業が採用する直接空気回収(direct air-capture)のような技術的手法は二酸化炭素を完全にしまい込むことができるが、コストがかかり過ぎる。一方、土壌や森林によるオフセットのように自然を利用する解決策もある。この手法は安価で利用できるが、二酸化炭素除去能力にはしばしば信頼性と耐久性の面で疑問が残る。エアルーム・カーボン・テクノロジーズがコスト目標を達成できれば、同社は比較的手頃な価格で恒久的に二酸化炭素除去サービスを提供できるはずだ、とダイチ社長は指摘する(エアルーム・カーボン・テクノロジーズのシャシャンク・サマラCEO=最高経営責任者は、カーボン180のEIRフェローシップ・プログラム(駐在起業家奨励制度)に参加している)。
ただ、このテクノロジーは初期段階にあり、エアルーム・カーボン・テクノロジーズは技術的難題に加え、市場における課題に直面するだろう。例えばストライプのように、今後何年にもわたって二酸化炭素除去に高額な費用を支払うことを厭わない顧客を見つけなければならない。
二酸化炭素除去に鉱物を利用
この事業が注目を集めている理由の一つとして同社の二酸化炭素除去の技術が、昨年発表されたネイチャーコミュニケーションズ誌の論文に掲載された点を挙げることができる。この技術は、鉱物を使用して二酸化炭素を捕捉、貯蔵する方法を研究している著名な研究者たちが開発したもので、論文の執筆者にはブリティッシュコロンビア大学のグレッグ・ディプル教授や、バイデン政権で化石エネルギー部主席副次官補を務めるペンシルベニア大学のジェニファー・ウィルコックス教授が名を連ねている。筆頭執筆者は、ノア・マックイーン。ウィルコックス教授の下で学ぶ大学院生であり、現在エアルーム・カーボン・テクノロジーズの研究責任者だ。
2018年の調査によると、2℃の温暖化を防ぐには、2050年までに年間100億トン、2100年までに年間200億トンの二酸化炭素を大気から除去する必要がある …
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