KADOKAWA Technology Review
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灯された希望、
「億超え」治療に賭ける
親たちの葛藤
Courtesy of Jennie Landsman
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This family raised millions to get experimental gene therapy for their children

灯された希望、
「億超え」治療に賭ける
親たちの葛藤

遺伝子療法によって、血友病をはじめとする遺伝性疾患を治療するための道が開けた。しかし、超希少な遺伝性疾患を抱える子どもの親たちは、日本円にして億単位の資金を自力で調達する必要に迫られている。 by Antonio Regalado2021.04.16

ギャリー・ランズマンは祈りを捧げるとき、息子のベニーとジョシュが駆け寄ってくるイスラエルでの情景を思い描く。ベニーたちはヤムルカをかぶり、ウエストバンドからツィツィートと呼ばれる綿の縁取りをはみ出させている。ランズマンは、息子たちを受け止めようと、両手を広げて待ち構えている。

現実には、ベニーもジョシュも、車椅子に乗せられており、言葉を話すこともできなければ、手足を動かすこともできない。致命的な遺伝性の脳疾患であるカナバン病を患っているのだ。

2021年4月8日、ランズマンと彼の家族は、上の子のベニーをオハイオ州デイトンの小児病院に運び込んだ。数時間かけて、脳外科医がベニーの頭蓋骨に穴を開け、彼の体に欠けている遺伝子の正しいバージョンを持つ何兆ものウイルス粒子を注入するためである。

この日、ニューヨークのブルックリンに住むランズマン家は、息子たちを救う唯一の希望だと考えている遺伝子療法を受けるために4年間にわたって取り組んできた活動のクライマックスを迎えた。

MITテクノロジーレビューがランズマン家の長い道のりを初めて紹介したのは、2018年の適確医療特集号の記事である。遺伝子療法の進歩により、血友病などの遺伝性疾患の治療が可能になっているが、カナバン病は超希少疾患であり、治療法を研究している企業はほとんどない。そこでランズマン一家は、インターネットで基金を立ち上げ、大胆な遺伝子治療の資金を独力で調達したのだ。

ゲノム・シーケンシングや、遺伝子置換、遺伝子編集などの技術が目覚ましく進歩しているため、理論的には数多くの希少遺伝性疾患を治療できる可能性が出てきた。だが、企業が乗り気でないため、患者の親は必要な実験の資金を得るために、自分たち自身で数百万ドルの調達に取り組まざるを得ないという。こうした倫理的なジレンマに加えて、治療を最初に受ける患者として、親が自分の子どもを指定しているケースもある。

例えば、デイトン小児病院で実施されている治験では、実験のための資金を調達できた家族の子どもを優先しているが、その額はこれまでに600万ドル近くに上っている。ニューヨーク大学の生命倫理学者で、小児遺伝子療法の治験における倫理的問題を研究しているアリソン・ベイトマン=ハウス助教授は、「誰が治験を受けられて、誰が受けられないのかという永遠の公平性の問題を提起しています」と言う。

ランズマン家は200万ドル以上を集めており、ロシア、ポーランド、スロバキアやイタリアの家族も治験の参加権を確保するために現金で寄付をしている。あるロシアの家族は、治験で使用される遺伝子治療の製造費用の80万ドルを含む114万ドルにのぼる「遺伝子療法治療」の請求書のコピーを掲載した。

このロシア人家族の緊急募金活動によると、この金額を払わないと、まだ幼ない娘のオルガが「回復するための唯一のチャンスである、米国での高価な治療を受けられない」とのことだった。 最終的には、少なくとも70万ドルを寄付することとなった。

このような「ペイ・ツー・プレイ(pay-to-play)」方式の治験は合法ではあるが、実験的な治療のほとんどが失敗に終わることを両親や資金提供者が理解しているかどうかなどの問題点もある。「必ずしも倫理的な問題があるわけではありませんが、患者がお金を払うことを求められる理由を精査する必要があります」とベイトマン=ハウス助教授は言う。「妥当な治験であれば、なぜ米国国立衛生研究所(NIH)やバイオテック企業が関心を持たないのでしょう? なぜ他の資金源がないのでしょう?」

うまくいくのか?

カナバン病は、ASPAと呼ばれる遺伝子のコピーが2つ壊れた状 …

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