現実問題となってきた「ワクチン・パスポート」にどう向き合うか?
一部の国で新型コロナワクチン接種が進み、「ワクチン・パスポート」が現実的な問題として認識されるようになってきた。技術面および倫理面での複雑な事情により、システム開発者や政府は今や、大きな困難に直面している。 by Lindsay Muscato2021.04.16
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が一部の国で展開される中、いかにして自分がワクチン接種を受けたことを証明するか? それが次の問題となっている。数カ月にわたって、接種証明つまり「ワクチン・パスポート」制度に関する議論、特にこの制度が引き起こすであろう倫理的な問題点は理論上のものだった。だが、この数週間でその取り組みは具体的なものになってきている。オーストラリアのカンタス航空は3月に試用を開始しており、ニューヨークは先週、米国で初めて州レベルでのシステムを立ち上げた。4月5日には、英国が段階的なロックダウン制限緩和の一環として、パイロットテストを実施すると発表した。こうした動きはさまざまな反応を呼んでいる。米国ではワクチン・パスポートの構想を支持する州もあれば、禁じた州もある。
ワクチン・パスポートとは?
ワクチン接種証明を資格化またはパスポート化することについて専門家が語る場合、大まかに分けて2つの理由が存在する。
いずれの場合も、ワクチン・パスポートは2種類のうちのいずれかの形式を採ることになるだろう。自分のスマホに保存するか、スキャンまたは提示する紙片を携帯するかである。システムは一般的に、ワクチン接種または最近受けた検査での陰性の証明と連携して機能する。英国の初期段階のテストでは、最近感染したという証明も認められることになると報じられている。一度感染すれば、免疫を得られる可能性があるからだ。
誰が製品を開発しているのか?
最近、さまざまな議論がされているにもかかわらず、ワクチン・パスポートは多くの地域でまだ具体的な形になっていない。だが、多くの国や民間企業が推進を続けている。例えば航空会社は、業界規模での解決策について話し合いをしている。国として最も進んでいるものとして、イスラエルのワクチン証明が挙げられる。同国の「グリーンパス」は2月に運用が開始された。
多くの競合がひしめき合う中で、ソフトウェア企業は数カ月に渡ってワクチン証明の主要ソリューションとしての座を勝ち取ろうと争っている。企業同士で協力し、一部の共通基準に関して合意に至るケースも出てきている。例えば、ニューヨークの「エクセルシオール・パス(Excelsior Pass)」システムは、「リナックス財団公衆衛生(Linux Foundation Public Health)」の一員であるIBMの「デジタル・ヘルス・パス」を利用している。リナックス財団は、開発者たちによるコードとアイデアの共有を支援する組織だ。
しかし、協力体制が強化されても、解決すべきことは依然として多い。ワクチン・パスポートについては、まだ数多くの問題について議論が先延ばしになっている。
開発者はどのようにプライベートな医療情報のセキュリティを保つのか?
セキュリティ研究者のアルバート・フォックス・カーンは、ニューヨークの「エクセルシオール・パス」アプリはプライバシーを保証しているが、どのように実現するのかについて説明がなされていないと話す。カーンはニューヨークを拠点とする「監視テクノロジー監督プロジェクト(Surveillance Technology Oversight Project)」を運営している人物だ。「私たちは、どんなデータが取得され、どのように保管されるのか、あるいはどんなセ …
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