KADOKAWA Technology Review
×
ディープフェイクの
偽「アマゾン社員」登場、
労組結成投票に混乱
AP
シリコンバレー 無料会員限定
Deepfake “Amazon workers” are sowing confusion on Twitter. That’s not the problem.

ディープフェイクの
偽「アマゾン社員」登場、
労組結成投票に混乱

米国で、アマゾン倉庫の労働者を名乗って同社の労働環境を過度に弁護するツイッターの偽アカウントが複数登場し、話題になっている。ディープフェイクのプロフィール画像が使われ、こうしたトレンドが広がっていることが懸念される。 by Karen Hao2021.04.02

米国のアマゾンの倉庫で、初となる労働組合の結成の是非を問う重要な投票が実施され、3月30日から開票作業が始まった。これに先立ち、アマゾン従業員を名乗る新しいツイッターアカウントが複数登場し始めている。プロフィールにはディープフェイク写真が使用されており、アマゾンの労働環境を過度に弁護する、思わず笑ってしまうような内容をつぶやいていた。実在の人物のようには見えなかったが、世間には混乱が広がった。一連のツイートは本当にアマゾンが仕掛けた、反労組を目的とした恐ろしいソーシャルメディア戦略だったのだろうか? そうでないことはほぼ確実だが、こうしたコンテキストでのディープフェイクの使用は、より懸念されるトレンドが世間に広がっていることを示している。

ディープフェイクが使われたプロフィールについて以前にも見聞きしたことがあるという感覚を抱いたとしたら、それには理由がある。アマゾンは2018年、自社倉庫の労働環境に問題はないと世間に宣伝するために、ある活動に着手した。倉庫にパソコンを何台か設置し、少人数の従業員グループが使うツイッター・アカウントを立ち上げたのだ。グループの名前は「アマゾンFCアンバサダーズ(Amazon FC Ambassadors)」で、自分たちがどれだけ仕事を気に入っているかを勤務時間中にツイートできるようにした。だが、そうした活動は裏目に出て、アンバサダーのパロディアカウントがツイッター上に多数発生する事態となった。アマゾンはすぐに活動を縮小し、アカウントの多くが停止もしくは閉鎖された、とアリク・トーラーは語る。トーラーは、調査報道サイトのべリングキャット(Bellingcat)でトレーニングおよび調査の責任者を務める人物である。

ところが今年の3月29日になって、アンバサダーの新たなアカウントが次々に出現した。少なくとも、表面上はそのように見えた。だが調べてみると、イヤリングの歪みやぼやけた背景など、ディープフェイクで作成された顔であることを示す特徴が一部のプロフィール写真に見られるという指摘が数多く上がってきた。そこから混乱が広がっていった。

「一連の新たなディープフェイク・アカウントは、労働組合に反対するソーシャルメディア活動としてアマゾンが仕掛けたものではないか」という噂がすぐに広がったが、アマゾンは後に、ニュ …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
  2. This AI-generated Minecraft may represent the future of real-time video generation AIがリアルタイムで作り出す、驚きのマイクラ風生成動画
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る