クラブハウス流行、ソーシャルメディアの未来は「音声」か?
音声SNSの「クラブハウス(Clubhouse)」が招待制にもかかわらず人気を集めている。パンデミック下で注目される音声アプリは肉声の親密感を再び届ける一方、モデレーションに関する深刻な問題も抱えている。 by Tanya Basu2021.03.02
ナンディタ・モハンは毎朝、メールをチェックするとき、大学の友人の声を聞いている。友人たちは一日を振り返ったり、思い出に浸ったり、困難なパンデミックの最中の卒業について思うことを話したりする。
モハンはベイエリアに住む、23歳のソフトウェア・プログラマーだ。彼女は電話をしているわけでも、個人的な話題が中心のポッドキャストを聞いているわけでもない。モハンが使っているのは、カプチーノ(Cappuccino)というアプリだ。カプチーノは、友人や家族といった限定されたグループのメンバーの録音を、ダウンロード可能な音声として配信する。
「みんなの声を聞くだけでも、友情がより尊く感じられます。声が聞こえるのは、やっぱり大きく違いますね」とモハンは言う。
音声メッセージ・サービスは何年も前からある。インドではワッツアップ(WhatsApp)のボイス・メモ機能が特に利用され、中国ではウィーチャット(WeChat)のオーディオ・メッセージ機能に人気がある。パンデミックの最中、こうした音声メッセージ機能はズーム(Zoom)疲れを回避しながら、簡単に連絡を取り合う方法として使われるようになった。しかし流行のアプリは続々と、音声の即時性と「生」の感じを、ユーザー体験の中核に導入しつつあり、人々はまた声でつながりはじめている。我々の電話の使い方は、通話からメッセージに移り、そして一周回って音声に戻るのかもしれない。
新参者
もっともよく知られている音声中心のソーシャル・ネットワークはクラブハウス(Clubhouse)だ。クラブハウスは昨春登場した招待制のアプリで、インターネット初期のチャット・ルームにトークショーのようなひねりを加えた感覚が高く評価されている。例えるなら、オンライン・パーティーでの懇談に途中から入るような感覚だ。
しかし、クラブハウスがユーザーに提供すると謳ったユーザー体験は崩れ去った。その原因はモデレーションの欠如と、女性を蔑視するベンチャー・キャピタリストが延々と自説をしゃべり続けていることだ。以前、クラブハウスのファンだったニューヨーク・タイムズ紙のテイラー・ロレンツ記者は、あるセッションでベンチャー・キャピタリストの言動を咎めたことがきっかけで嫌がらせを受けるようになった。
「もう(クラブハウス)アプリを立ち上げるつもりはありません」とロレンツ記者はワイアード誌に語った。「ユーザーの安全を真剣に考えないネットワークを、支持したくはありません」。ロレンツ記者が経験したことは、それだけで終わったわけではない。今やより邪悪で、人種差別的な面もあらわになってきている。表向きは招待制という排他的な要素を持つ、クールな印象があるクラブハウスにも、その他のあらゆるソーシャル・プラットフォームを悩ませるような行動をする人たちが潜んでいるようだ。
一方、ゲーム・チャット・アプリの「ディスコード(Discord)」は、爆発的に人気を集めている。ディスコードではVoIP(IPネットーワーク上で音声通話を実現する技術)ソフトウェアを使って、音声チャットをテキストに変換できる(ゲームをしながらタイピングするのは無理だと感じたビデオ・ゲーマーから生まれたアイデア)。ディスコードはパンデミック中の6月、人々のつながりたいという需要を取り込むため、新しいスローガン「話せる、あなたの居場所(Your place to talk)」を発表し、ゲーマー中心のサービスという印象を薄めようとした。パンデミック発生直前の2月には約140万人だったユーザーが、10月には約670万人に跳ね上がったことから、このマーケティングは功を奏したようだ。
しかし「サーバー(servers)」と呼ばれるディスコードのコミュニティの様相はさまざまだ。リモートお泊り会を計画する子供のように若く無垢なユーザーもいれば、バージニア州シャーロッ …
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