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イーロン・マスク、炭素回収技術に1億ドル
Carbon Engineering
What Musk's $100 million carbon capture prize could mean

イーロン・マスク、炭素回収技術に1億ドル

テスラのCEOであるイーロン・マスクは、「最高の二酸化炭素回収技術」を競うコンテストに賞金1億ドルを寄付すると発表した。金額以上に、炭素回収分野に人々の注目を振り向ける効果が期待されそうだ。 by James Temple2021.01.26

純資産額が1800億ドルを超え、世界で最も裕福な人々のひとりであるテスラの最高経営責任者(CEO)イーロン・マスクが、「最高の炭素回収技術」に対する賞金として1億ドルを寄付すると、1月22日にツイッター上で発表した。

マスクCEOは同ツイートに続けて、詳細は翌週発表するとツイートしており、コンテストの仕組みも、どのような技術が対象となるのかもまだ分からない。 「炭素回収」という言葉からは、発電所や工場からの温室効果ガスの漏出を防止する方法とも、大気中から汚染物質を回収するさまざまな手段ともとれる。

いくつかのスタートアップ企業が、大気中から二酸化炭素分子を吸収する直接大気回収装置と呼ばれる機器を開発しており、回収した二酸化炭素を地下に貯留したり、カーボンニュートラル燃料の製造に利用したりする方法を研究している。鉱物樹木、植物やを利用して温室効果ガスの排出を低減する方法を模索している研究グループもいる。

しかし、排出現場での二酸化炭素回収も大気からの除去も、今のところ大きな規模での実現には至っていない。高額な費用が掛かることと、現状では回収した二酸化炭素の利用価値が限られていることが、その主な理由だ。しかし、気候変動の脅威が高まるにつれ、どちらの分野にもより多くの資金と関心が集まっている。

これまでの排出量と化石燃料からの脱却の遅さを考慮すると、本当に危険なレベルの地球温暖化を防止するためには膨大な量の炭素除去が必要になることが、気候モデルによって示されている。その間は、排出現場で運用する炭素回収ツールが、セメント産業や製鉄業といった脱炭素化が困難な特定の分野に有望な手段をもたらしてくれるかもしれない。あるいは、安定性に乏しい風力や太陽光といった電力源の供給が低下した際に、天然ガスプラントでカーボンフリーの電力を生産するのに役立つ可能性もある。

今後数十年内に二酸化炭素排出を完全になくすことが目標とされる中で、二酸化炭素回収および除去にある程度の期待を寄せている国や企業の数は急激に増加しており、高コストあるいは未実証の手法に対する期待度が高まっている。そのため、こうした分野の進展を加速させることが急務となっている。

マスクCEO以前にも多くの人物が、賞金や直接投資の形で二酸化炭素回収の分野に対する資金援助を申し出ている。1年前には、マイクロソフトが「二酸化炭素の削減、回収、除去技術」のために10億ドルの基金を設立する計画を発表した。同社は、これまでに自社が排出してきた二酸化炭素をすべて相殺することを目指している。 二酸化炭素の直接大気回収を扱うクライムワークス(Climeworks)、カーボン・エンジニアリング(Carbon Engineering)、グローバル・サーモスタット(Global Thermostat)などのスタートアップ企業は軒並み、少なくとも数千万ドル規模の 投資を獲得した。また、「カーボンXプライズ(CarbonX prize)」コンテストでは、二酸化炭素の市場拡大と利用価値の引き上げを目指す取り組みの一環として、製品に二酸化炭素を取り入れる手法を開発している企業に賞金2000万ドルを授与する申し出をしている

単独あるいは複数のベンチャー企業にとって、新たに提示された1億ドルが「マスク賞」獲得の動機となるのは確かだろう。だが、この金額はマスクの資産からすれば、ほんのかけら程度に過ぎない。例えばカーボン・エンジニアリングは以前、本格的な直接大気回収施設1つだけでも3億ドルから5億ドルのコストを要するかもしれないと発言している(「賞へ(1億ドルを寄付する)」というツイートの文言からすると、複数の人物や団体が資金を出し合ってより高額の賞金を提示する計画があり、マスクは出資者の1人として参加するのかもしれない)。

資金は別として、マスクが特に得意としていることの一つは、人々の注目を浴びることだ。そしてこの分野はまさに、人々の注目を必要としている。

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MITテクノロジーレビュー[米国版]のエネルギー担当上級編集者です。特に再生可能エネルギーと気候変動に対処するテクノロジーの取材に取り組んでいます。前職ではバージ(The Verge)の上級ディレクターを務めており、それ以前はリコード(Recode)の編集長代理、サンフランシスコ・クロニクル紙のコラムニストでした。エネルギーや気候変動の記事を書いていないときは、よく犬の散歩かカリフォルニアの景色をビデオ撮影しています。
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