新型コロナで多大な犠牲を払ったブラジルは世界の指標となるか?
ブラジルの都市マナウスでは、5月に新型コロナウイルスによる医療崩壊が起こり、多くの人々が死亡する最悪の感染状況に陥った。しかし、それ以降、新規感染件数と死者数は急速に低下しており、その理由は集団免疫の獲得によるものかもしれない。 by Antonio Regalado2020.09.24
大都市で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染拡大を歯止めなく許すとどうなるのだろうか。
ブラジルの都市マナウスがその答を提供しているとするならば、それは、エピデミック(局地的な流行)が収まるまでにその都市の人口の約3分の2が新型コロナウイルスに感染し、500人に1人が死亡する可能性があるということを意味する。
赤道付近に位置するアマゾナス州の州都であるマナウスでは、新型コロナウイルスの感染が急速に拡大した5月、医療崩壊が起こり、いくつもの新しい墓が掘られるという悲惨な状況が報じられた。棺の需要は前年比で4~5倍に増加した。だが、4カ月前にピークに達してから、人口180万人の都市マナウスの新規感染件数と死者数は原因不明の理由で急速に減少している。
ブラジルと英国の研究者グループの主張によると、その理由が判明したという。あまりにも多くの人が感染してしまったため、新型コロナウイルスの宿主が不足している状態になっているというのだ。
メッドアーカイブ(medRxiv)に投稿された査読前論文(プレプリント)で、サンパウロ大学熱帯医学研究所のエスター・サビーノ教授が率いる研究グループは、保存された血液について新型コロナウイルスの抗体検査を実施した結果、3月にマナウスで最初の感染者が確認されて以来、マナウスの人口の44~66%が感染したと推定されると述べている。
「今回分かったことから判断すると、恐らく世界で最も高い有病率でしょう」とサビーノ教授は電話インタビューで述べた。「死者数が非常に急速に減少しているのには、高い感染率が関連しています」。
米国のドナルド・トランプ大統領は、新型コロナウイルスは自然に「消える」と発言して嘲笑の的になった。しかしそのコメントは、十分な数の人々がウイルスに感染すれば、ウイルスに対抗する抗体が作られ、人々の間でいわゆる集団免疫が形成され始めるという事実に言及していたのかもしれない。より多くの人が免疫を獲得すれば、ウイルスが新しい人に感染して、感染を拡大し続けることが困難になる。
それこそがまさにマナウスで起こっていることだとサビーノ教授らは考えている。論文には「公衆衛生上の対策に加えて、集団の行動の変化がマナウスでの新型コロナウイルスの感染拡大の抑制に役立った可能性がある。しかしながら、マナウスの異常に高い感染率は、集団免疫が流行規模の決定に重要な役割を果たしたことを …
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