中国、再使用型宇宙船の打ち上げ・回収に成功か?
中国が再使用可能なシャトル型宇宙船の着陸に成功したという。詳細は不明だが、米軍の軍事用宇宙船「X-37B」をモデルにしているようだ。 by Neel V. Patel2020.09.10
中国は9月6日、2日前に軌道投入したばかりの再使用可能なシャトル型宇宙船の着陸に成功したという。中国国営の新華社通信が報じた。「この度の飛行の成功は、再使用型宇宙船の研究における中国の画期的な進展であり、宇宙の平和利用を目的とした低コストで利便性の高い周遊飛行の提供が期待される」としている。
今回のミッションやテストされた宇宙船の詳細について、中国が公開している情報はほとんどない。宇宙船はゴビ砂漠の酒泉衛星センターから打ち上げられ、長征2号Fロケットから切り離されたというが、公開されている画像もない。
中国はこれまでも、再使用型宇宙船の開発に関心を示してきた。3年前の新華社の報道では、中国が2020年に実際にそのような宇宙船を打ち上げる計画があることをほのめかしている。「従来の一度しか使えない宇宙船」とは異なり、「飛行機のように空を飛ぶ」というものだ。
今回の報道を耳にした多くの専門家は、中国は米空軍の軍事用宇宙船「X-37B」の中国版の開発を目指していると見る。X-37Bは、低軌道を数年間連続飛行した後、地球に帰還し、滑走路に水平に着陸する能力を持つ。中国軍のある関係者は、今回の宇宙船のイメージとして、「米国のX-37B(宇宙機)を見ればいいだろう」とサウスチャイナ・モーニング・ポストにコメントしている。
中国が今回のミッションのために発射台に視覚的な変更を加えたという事実が、それらの推測を補強する材料となっている。変更の理由は、直径がより大きなペイロード(積載物)やX-37Bに近い形の宇宙船に対応するためだろう。
スペースニュース(SpaceNews)によると、中国の宇宙船が地球に帰還する前に軌道に突入した小さな物体が、米国の宇宙監視網に捉えられている。この物体の正体は不明で、目的もはっきりとしない。
今回は、中国が今後数年間で次々に打ち上げる再使用型宇宙船の試験の1つに過ぎないかもしれない。中国航天科工集団(China Aerospace Science and Industry Corp:CASIC)が「腾云(Tengyun)」というスペースプレーンを開発する一方で、民間企業のアイスペース(iSpace)も独自の宇宙船を開発する目標をほのめかしている。
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- ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
- MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。