ハッブル宇宙望遠鏡がネオワイズ彗星を撮影、「コマ」はっきりと
NASAのハッブル宇宙望遠鏡が捉えたネオワイズ彗星の高解像度画像が公開された。この夏に地球および太陽に最接近したネオワイズ彗星は今世紀に入って北半球で観測できた最も明るい彗星であり、次に戻ってくるのは6800年後の予定だ。 by Neel V. Patel2020.08.27
米国航空宇宙局(NASA)は、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したネオワイズ(Neowise)彗星の新しい写真を公開した。この夏に太陽に接近した後の、ここ数十年で最も明るい彗星をクローズアップで捉えている。
8月8日に撮影された新しい画像は、太陽に熱せられることで彗星の核から放出されるガスや塵の外層である彗星の「コマ」を主に捉えている。今回撮影された画像は、ハッブル宇宙望遠鏡がこれまでに撮影した彗星の画像の中で、特に高い解像度を持つ画像の1つだ。
新しい画像は、太陽の近くを通過した後のネオワイズ彗星を撮影したものだ。彗星が太陽に接近することで受ける高温と高圧に耐えたことを示している。彗星は、(2013年に太陽に最接近したアイソン彗星のように)太陽に最接近する際に崩壊することが多いため、ネオワイズ彗星が生き残れるかどうかはまったく保証がなかった。
正式には「C/2020 F3」として知られているネオワイズ彗星は、1997年のヘール・ボップ(Hale-Bopp)彗星以来、北半球で観測できる彗星として最も明るい彗星だ。ネオワイズ彗星は、現在実施されているネオワイズ計画(ネイワイズ彗星の名はこれに由来する)でNASAの「広域赤外線探査衛星(WISE:Wide-field Infrared Survey Explorer)」の宇宙望遠鏡を運用する科学者たちが、今年の3月27日に初めて発見した。ネオワイズ彗星の氷を含む核の直径は恐らくせいぜい4.8キロメートル程度だが、今回ハッブル宇宙望遠鏡が新たに撮影した画像は、彗星のコマが約1万8000キロメートルに広がったことを示している。
ネオワイズ彗星が発見された時、彗星はすでに太陽に接近しつつある軌道にあり、今年の夏の夜には肉眼でネオワイズ彗星を観測できていた。ネオワイズ彗星は7月3日にわずか約4300万キロメートルの距離まで太陽に最接近し、7月23日には約1億300万キロメートルの距離まで地球に最接近した。一部の科学者は、ネオワイズ彗星はその明るさから「大彗星」に指定されるべきだと主張している。
科学者たちは、今後長年にわたり、ネオワイズ彗星が地球や太陽に接近した間に収集した大量のデータを取り出して分析していく。今後の発見により、この彗星がどのように形成され、原始太陽系の状態が当時どのようなものであったのか明らかになるかもしれない。ネオワイズ彗星は現在、太陽系外縁の彼方に向かっており、6800年先まで地球や太陽の近傍には戻ってこない。
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- ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
- MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。