パンデミックで変わるカネの動き、マネロン対策でAI活用が加速
新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって経済が停滞し、犯罪組織のカネの動きも止まった。だが、犯罪組織は新たな方法でマネーロンダリングを試みている。従来型のルールベースの対策に代わり、変化にすばやく対応できる機械学習を活用する動きが高まっている。 by Will Douglas Heaven2020.08.31
今年初めに世界経済が停止に追い込まれたことで、事業経営者や消費者だけでなく、犯罪者たちも突如として問題を抱えることになった。彼らにとっての問題とは、「どうやってお金を動かすか」だ。
通常、組織犯罪は、合法ビジネスを通じて複数の組織を経由し、国境を越えて利益を動かす。出処との明確なつながりが見えなくなるまでそれを繰り返すプロセスが、いわゆるマネーロンダリング(資金洗浄)と呼ばれるものだ。
だが多くの事業が停止、あるいは平常時に比べて収益減に追い込まれる中で、日々の金融活動を模して資金隠しを続けるのは難しくなっている。英国を拠点とする防衛・セキュリティ分野のシンクタンクである「ルシ(RUSI)」金融犯罪部門のイザベラ・チェイス主任研究員は、「お金が入ってきても、それを保管する場所がないのです」と話す。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、犯罪集団は新たな資金の移動方法を考えなければならない状況に追い込まれた。その結果、疑わしい金融取引の検知と金の出処を突き止める、マネーロンダリング防止(anti-money laundering:AML)チームの仕事もより困難なものになっている。
AMLチームの戦略の鍵となるのが、人工知能(AI)ツールだ。大規模かつ長い歴史を持つ金融機関の中には、規則に則った旧来型システムを適応させるのに時間がかかっているところも多い。一方で、比較的小規模かつ新しい企業は、異常な活動を(その内容に関わらず)検知する機械学習を活用している。
マネーロンダリングの正確な規模を把握するのは難しい。だが、国連薬物犯罪事務所によると、世界のGDPの2~5%(現在では8000億ドルから2兆ドル)が、毎年マネーロンダリングの対象になっているという。その大半は検知されない。推定では、犯罪者の収益のうち、押収されるのはわずか1%程度だという。
さらにこれは、新型コロナウイルス感染症発生以前の話だ。新型コロナへの恐怖から、偽の防護具や医薬品を流通させて莫大な利 …
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