KADOKAWA Technology Review
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ディープマインドの研究者が
問う「AI界の植民地」問題
Ari Liloan
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The problems AI has today go back centuries

ディープマインドの研究者が
問う「AI界の植民地」問題

人工知能(AI)の最も厄介な問題点であるアルゴリズム的差別や「ゴーストワーク」は偶然の産物ではない。問題の背景にあるのは、過去に植民地化した者とされた者との間の力の不均衡であり、長く忌むべき歴史を理解することが問題解決の第一歩となる。 by Karen Hao2020.08.06

2015年3月、南アフリカのケープタウン大学で、英国の植民地主義者セシル・ローズのキャンパス像を巡って抗議活動が勃発した。大学の建つ土地を贈与した鉱山王であるローズは、アフリカ人を大量虐殺し、アパルトヘイトの基礎を築いた。学生たちは「ローズは倒れろ」という横断幕を掲げ、像の撤去を要求した。彼らの抗議活動は、教育界に残る植民地時代の遺産を根絶するための世界的な運動に火をつけた。

この出来事はまた、グーグルの人工知能(AI)子会社であるディープマインド(DeepMind)の南アフリカ人のAI研究者であるシャキール・モハメド博士を触発し、AI研究にも植民地時代の遺産が存在するかもしれないと考えさせた。2018年、AI分野がアルゴリズム的差別のような問題を認識し始めていた矢先、モハメド博士はその時の所見をブログ記事にし、「AIを脱植民地化する」ことを研究者に呼びかけた。つまり、AI分野の仕事をシリコンバレーといった西洋のハブから離して再分配し、AI技術の発展を導くための新しい声、文化、アイデアを呼び込むべきだとした。

そして今、ジョージ・フロイド殺人事件や世界的な反人種差別運動によって、英国のオックスフォード大学のキャンパスでは「ローズは倒れろ」という叫びが再燃している。そのことを受けてモハメド博士は、ディープマインドの同僚のウィリアム・アイザック博士、オックスフォード大学の大学院生であるマリー・テレーズ・ピンとともに新しい論文を発表した。論文は、AIの課題がなぜ植民地主義に根ざしているかを具体例で説明することにより、モハメド博士の元の論点を肉付けし、さらにその歴史を認識することでそれらに対処する術を提示している。

AIに巣食う「コロニアリティ」

歴史上では植民地主義は終わったかもしれないが、その影響は今日も存在している。これは専門家が「コロニアリティ」と呼ぶもので、現代の人種、国、貧富の差などの集団間の力の不均衡は、植民地化した者とされた者との間の力の不均衡の延長線上にあるという考え方だ。

構造的人種差別はその一例だ。もともとヨーロッパ人は、アフリカの奴隷貿易やアフリカ諸国の植民地化を正当化するため、人種と人種間の差異という概念を発明した。米国においてもそのイデオロギーの影響を、奴隷制やジム・クロウ(日本版注:米国にかつて存在した人種差別的内容を含む州法の総称)、警察の残虐行為などの歴史に見ることができる。

同様に、植民地化の歴史が、AIの持つ最も厄介な特徴や影響のいくつかを説明し得るとモハメド博士らは主張し、次の5つの点でコロニアリティがはっきりした形をとって現れているとしている。

アルゴリズム的差別・抑圧

アルゴリズムによ …

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