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「あなただけが特別ではない」陰謀論者と対話する10のヒント
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How to talk to conspiracy theorists—and still be kind

「あなただけが特別ではない」陰謀論者と対話する10のヒント

新型コロナやワクチンに関する陰謀論を信じる人は決して少なくない。陰謀論を信じている人と対話するための10のヒントを伝えよう。 by Tanya Basu2020.10.02

5月4日、26分の巧妙な動画が公開された。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、実は実験室で作られたウイルスであり、世界を混乱に陥れるために意図的にばら撒かれ、その結果作られるワクチンによって利益を得ることが目的だという内容だ。この動画「プランデミック(Plandemic)」には何一つ正しい情報はなく、その主張は完全かつ繰り返し誤りを指摘された。それでも動画はインターネット上で拡散しフェイスブックで250万「いいね」がついた。それから間もなく、別の陰謀論が広がった。ビル・ゲイツが、5G基地局から人々に埋め込んだマイクロチップを起動して追跡監視し、ワクチン接種の取り組みを管理しようと計画している、というものだった。繰り返しになるが、これもまた明らかなでたらめだ。

しかし、ピュー研究所(Pew Research Center)の調査で、32%の人々がこれらの陰謀論をおそらく、あるいは絶対に正しいと考えていることが分かった。ひょっとすると、自分の家族や友人、近所に住む人がその中に含まれているかもしれない。

陰謀論を信じている人と、どのように話せばいいのだろうか? 特に活気に満ちたネット・コミュニティのひとつ「r/ChangeMyView(チェンジマイビュー)」のメンバーが日々扱っているのは、そういうことだ。チェンジマイビューは、米国の人気掲示板サイトであるレディット(Reddit)のコミュニティで、自身が信じていることにあえて疑問を呈し、冷静で穏やかな議論を進める場として知られている。

陰謀論の研究者とともに、チェンジマイビューの最もアクティブなユーザー数名に、陰謀論を信じている人との対話に関するヒントを尋ねた。

話す前に心に留めておくべきこと

陰謀論を信じることは、とても人間的で普通のことだ。「陰謀論はある程度、誰の心にも響く」。陰謀論とフェイクニュースについて2冊の著作を持つ心理学者のロブ・ブラザートン博士は話す。それは、防御のメカニズムなのだ。人々は疑念を抱くもので、説明できないことを恐れるようにできている。

陰謀論の影響を受けない人はいない。あなた自身もだ。ブラザートン博士は、「第三者効果」を引き合いに出す。平均的な人は、自分よりもフェイクニュースや陰謀論の影響をはるかに受けやすいと考える傾向がある、という仮説だ。フェスブックでは叔母よりも自分が賢いと思うかもしれないし、教育が陰謀論を信じる傾向を抑制するというエビデンスがある一方で、本当のところは陰謀論にまったく影響されない人はいないのだ。チェンジマイビューの複数のメンバーは、こうした謙虚な考え方によって人として変わったと話した。また、謙虚な考え方は、陰謀論を信じる人々との対話に役立つという。

ある特定の人の集団が最も陰謀論を信じやすい、ということはない。「白人、黒人、アジア系、ヒスパニック系、先住民族の人々が、陰謀論を信じる代表例をたくさん見てきました」とレディット・ユーザーのアイヘイトドッグス2(ihatedogs2)は語った。「たくさんの女性、LGBTQ+(セクシュアル・マイノリティの総称)、あらゆる仕事をしている人々、多くのさまざまな国の人々もそうです。政治的な傾向に関しても、多種多様です。リベラル、保守、社会主義者、リバタリアン(自由主義者)、共産主義者、ファシストなど、多様性に富んでいます」。

「社会的距離の確保(ソーシャル・ディスタンス)」によって、陰謀論が訴求力を一層高めている。デマに関する専門家のハーバード大学のジョアン・ドノバン博士は、ソーシャル・ディスタンスに直面する中で、新型コロナウイルス陰謀論が共同体的な感覚を与えていると話す。「病気になった人々、買い占めで空になった棚、換気装置といったイメージはすべて、我々にとって深刻なトラウマになっています」とドノバン博士は話す。人々は、近くに友人や家族がいないとソーシャルメディアに惹きつけられ、陰謀論が提供する説明から安心感を得ているのだ。

そのすべてに、ほんのわずかな真実がある。「どこかに検証可能な、物騒な推測が重なって作り上げた情報があります」とドノバン博士はいう。例えば5Gの陰謀論は、もとをたどると12月にサイエンス・トランスレーショナル・メディシン誌(Science Translational Medicine)で発表された論文の可能性がある。「量子ドット」という、近赤外領域の可視光に近い光を発する粒子を皮膚に埋め込んでワクチンの予防接種を記録できる物質についての論文だ。しかし、論文の筆頭執筆者、コッホ研究所(David H. Koch Institute for Integrative Cancer Research)のケヴィン・マックヒュー博士は、追跡監視やマイクロチップはまったく関係がないと米公共ラジオ局(NPR)に語った。「どこから出てきた話かも分かりません。量子ドットは、光を発するだけです」。陰謀論の中に隠された、ほんのわずかな真実だ。

陰謀論には物騒な「よそもの」がよく出てくる。ドノバン博士によると、共通してこのような理論の基盤になっているのは人種差別だ。「陰謀論は『あなたに知って欲しくないこと』(だから知りたくなるし、信じたくなる)」とドノバン博士は話す。そして、陰謀論者が言及する対象は「人種によって特徴付けられる傾向」にある。

誰もがインフルエンサーだ。それには、いい面と、悪い面がある。反ワクチンの動きは、女優のジェニー・マッカーシーのような著名人の間で強い影響力を見せた。著名人たちは、自身のプラットフォームを使ってその主張を声を大にして語ったのだ。今や、ユーチューブやポッドキャストの配信によって、極端な意見を持つ非主流派の意見を主流派に変えることが可能になっている、とドノバン博士は話す。しかし、それはまた、誤りを暴く、自由に使える情報源がたくさんある、ということも意味している。

陰謀論者との話し方

  1. 常に、いつでも丁寧に、礼儀正しく話す。今回、インタビューした全員が、敬意、思いやり、共感がなければ、考えや心を開いてくれる人はいないと話した。そうしないと、誰も耳を傾けてくれないのだ。
  2. 人前で話さない。ドノバン博士は、ソーシャルメディアで問題のある投稿をした人物を見かけたとき、コメント欄に書き込みを連ねることはしない。「彼らの閉鎖空間に投稿するより、直接メールでテキストメッセージを送って、送信者が特定の個人として分かる方法で連絡するようにしています」とドノバン博士は話す。そうすることで、議論が投稿者にとって恥ずかしい結果になるのを防ぐ。また、公の場でやり込めたいわけではなく、偽りのない思いやりと会話に興味があると暗に示すのだ。
  3. 最初に下調べをする。そうすることで、自分の時間とエネルギーの無駄を省く。「陰謀論に汲みしている人たちに、考えを変えるにはどうすればいいか尋ねます。もし絶対に考えを変えないと言うなら、額面通りに受け取り、わざわざ関わるべきではありません」とチェンジマイビューのモデレーター、アイヘイトドッグス2は語った。実際、サブレディットでは、ある人が真に議論に応じるかどうかを示す行動リストがある。
  4. 同意する。ほんのわずかな真実のことを覚えているだろうか? 多くの陰謀論では、誰もが同意する要素を取り上げることが多い。そのような要素を確認し合うこと。信頼を築いて「私は味方」という雰囲気を作り、次のもっとやっかいなことに備える。
  5. 「事実のサンドイッチ」を試す。言語学者のジョージ・レイコフ教授(カリフォルニア大学バークレー校)が考案した方法で、事実・虚偽・事実(fact-fallacy-fact)のアプローチを使うのだ。「事実を述べて、陰謀論の誤りを指摘し、そして再び事実を述べるのです」とドノバン博士はいう。たとえば、5Gの陰謀論を信じている人と話しているのなら、次のように議論を組み立てられる。「新型コロナウイルスは空気中に浮遊するウイルスで、くしゃみや咳で感染します。つまり、粒子なのです。ウイルスは電波では伝染しないため、新型コロナウイルスは空気中に浮遊するウイルスであって、5Gで伝染することはあり得ません」。このようにして、繰り返しになるものの、事実を補強し陰謀論が破綻する点を指摘する。
  6. または、ソクラテス方式を使う。つまり、こちらから質問をして、回答者自身が自分の主張を精査し、その主張に説得力があるかどうかを確認するのだ。チャンジマイビューのモデレーター、スチュアート・ジョンソンによれば、自分の中では群を抜いて最も効果的な方法だという。回答者自身が情報源を見つけ、自分の主張を自身で守るよう求めるからだ。「誰かの意見を変えるのに最もよい方法は、自分自身で(誤りを)発見したように感じさせることです」とジョンソンは話す。つまり、行き詰まるまで質問と回答のやり取りを繰り返し、穏やかに矛盾を指摘することだ。ある研究によると、人は政策について口にするよりも多くのことを知っている、と考える傾向にある。そこで、ソクラテス方式を使うとその矛盾が明らかになる。別の研究では、この戦術によって一方の側が非難されていると感じるのを防げることが分かっている。
  7. 愛する人には十分注意する。インタビューした全員が、親兄弟といった愛する人が陰謀論を信じている場合にどう向き合うかという質問に躊躇した。関係が極めて近い場合には自分が退くと話した人が多かった。「関わる価値があるかどうかを、慎重に考えなければなりません」とアイヘイトドッグス2は話した。「愛する人がどれだけ深く陰謀論を信じているのでしょうか? 陰謀論を信じることが、どれだけ有害なのでしょうか?」。難しいかもしれないが、思ったことを言わないという戦い方を選ぶことは、精神衛生上の助けにもなる。もう1人のチェンジマイビュー・ユーザー、カナダ・コンスティチューション(Canada Constitution)が話したように「ソーシャルメディアでの戦いよりは、円満な感謝祭の方が望ましい」のだ。
  8. 事実がどうであろうと、変わりたくない人がいることを知る。研究者が発見したのは、大きく政治化した分野では自分の信念の原理を、それが現実とは違っても、正当化する人もいるということだ。その理由は単純に、間違いを認めたくないからだ。カナダ・コンスティチューションは以前、精神科の薬は陰謀だと考える人と話したとき、そういう人に出会った。「どれだけたくさんの査読済み研究を引用しても、意見を変えようとしませんでした。私はおびえることも、イライラすることもなく、むしろ、彼らの信じていることを理解するためにさらに質問する機会を得ました」。この手法は、自身の議論を磨くのに役立つだけでなく、より思いやりのある方法でもある。
  9. うまくいかなかったら止める。チェンジマイビューのモデレーターの1人は、対話がうまくいかないときは「『現実世界(IRL:In Real Life)』で冷静になる」ことを勧めた。スマートフォンまたはコンピューターの電源を切り、散歩に出かけるのだ。別の人物はもっと単純にこう話した。「議論を楽しめずに怒りが湧いてきたら、単純にそこで打ち切ります」。
  10. 少しずつでも助けになる。一度の会話で人の考えが変わることは、おそらくないだろう。それでいいのだ。「ある人が信じていることは、一度に急激に変化しません」とチャンジマイビューのモデレーター、ゼムアスクドセルパン(themaskedserpent)は語った。「誰かの視点を、少し変えることもあります。水が岩を侵食するように。陰謀論の誤りは暴けませんが、将来誰かがそうするための道筋をつけることになります」。

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人間とテクノロジーの交差点を取材する上級記者。前職は、デイリー・ビースト(The Daily Beast)とインバース(Inverse)の科学編集者。健康と心理学に関する報道に従事していた。
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