へき地でのマラリア診断に製作費20セントの遠心分離機
子どものおもちゃを参考に作られた紙製遠心分離機は、最大で毎分12万5000回転し、電力は不要だ。 by Michael Reilly2017.01.11
おもちゃのような紙製遠心分離機は、標準的医療機器が入手しにくい場所で、血液分析やマラリアのような病気の診断にかかる費用を大幅に削減できる。
論文誌のネイチャー・バイオメディカル・エンジニアリング誌1月10日号は紙製遠心分離機「ペーパーフュージ(Paperfuge)」の詳細を掲載している。スタンフォード大学のマニュ・プラカシュ助教授が率いる研究チームは、基本的に医療用の円盤状の紙と糸、血液サンプルを保持する小さなストローを使って遠心分離機(centrifuge)を作った(研究チームは3Dプリンター製のプラスチック版も開発した)。糸を巻いて、装置をぐっと引っ張ることで、1分間当たり最大12万5000回まで回転する。1分半の回転で血液から血漿を分離でき、血液にマラリア原虫がいる場合、15分間の回転で血中から原虫を分離できる。
2014年、MIT Technology Reviewが「35歳未満の35人の革新者たち」のリストに選出したプラカシュ助教授は、倹約科学のパイオニアだ。倹約科学とは、安価なツールの開発を目指し、公衆衛生に関する世界最大の課題に注目する、重要で人命救助につながる分野だ。プラカシュ助教授は、5ドル未満の費用のマイクロ流体化学ラボや55セント相当の材料でできた顕微鏡を開発した。遠心分離機と同様、顕微鏡はマラリアを診断する重要な道具であり、罹患(りかん)者に対する治療を改善できる。
(関連記事:“35 Innovators Under 35: Manu Prakash”)
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- マイケル レイリー [Michael Reilly]米国版 ニュース・解説担当級上級編集者
- マイケル・レイリーはニュースと解説担当の上級編集者です。ニュースに何かがあれば、おそらくそのニュースについて何か言いたいことがあります。また、MIT Technology Review(米国版)のメイン・ニュースレターであるザ・ダウンロードを作りました(ぜひ購読してください)。 MIT Technology Reviewに参加する以前は、ニューサイエンティスト誌のボストン支局長でした。科学やテクノロジーのあらゆる話題について書いてきましたので、得意分野を聞かれると困ります(元地質学者なので、火山の話は大好きです)。