TSMCが米国に120億ドル規模の半導体工場、米中摩擦はどう動くか?
半導体受託製造の台湾セミコンダクター・マニュファクチャリングは5月15日に、米国に120憶ドルの新工場を建設すると発表した。この発表は、トランプ大統領がかねてから目論んでいる、半導体技術のサプライチェーンを中国から切り離す計画を後押しするようにも見えるが、実際には裏目に出てしまうかもしれない。 by Karen Hao2020.05.21
半導体受託製造世界大手の台湾積体電路製造(TSMC:台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング)は5月15日、アリゾナ州に120億ドル規模の工場を建設する計画を発表した。2024年までに操業する見通しだ。この新工場により、約1600人の雇用が創出されることが期待され、間接的には何千もの雇用を生み出すことになる。
この発表は一見すると、国内の半導体技術サプライチェーンを中国から切り離そうとしているトランプ政権の勝利を示しているかのように思われる。トランプ政権は、アジアから先端技術製造能力を取り戻し、ファーウェイのような中国技術系大手企業に対して米国の設備や知的財産の供給を断とうとしている。しかし、このTSMCの1件がどのような影響をもたらすかは定かでない。むしろ、米国のサプライチェーンが実際にはどれほど中国と結びついているかを際立たせている。
TSMCは最先端のコンピューティング・チップを製造している世界に3社しかない企業の1つだ。同社の製造するチップには、10ナノメートル以下のサイズのトランジスターが内蔵されている。残りの2社は、韓国に拠点を置くサムスン電子と米国を拠点とするインテルである。インテルは、製造する最先端のチップの大半を自社製品に使用している。ちなみに、中国最大の半導体製造企業であるセミコンダクター・マニュファクチャリング・インターナショナル(SMIC)は、14ナノメートルより小さなチップを製造する技術を持っていない。そのため、TSMCが徐々に米国・中国間の技術面の優勢をめぐる競争の中心となってきている。
TSMCの最大の取引先はアップルとファーウェイだ。昨年、米商務省は禁輸対象企業のリストであるエンティティリストにファーウェイを追加した。ファーウェイが関連企業114社と共にこのリストに追加されたことで、米企業は特別な許可なしでこれらの企業に自社の技術を販売できなくなった。米商務省は、国家安全保障を理由にこのような決断をしたと発表している。ただし、この決断は、ファーウェイが中国の技術発展と海外進出において、特に人工知能(AI)や5G戦略の面で重要な役割を担っていることと無関係ではない。
TSMCは米国企業ではないため、当初はエンティティリストから外されていた。そのため、ファーウェイは依然として自社のスマホやAIプロジェクト、5Gネットワークに使用する最先端のチップをTSMCから入手できた。5月 …
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