ディズニー出身のCG監督は
中国のVR映画産業に
何を教えているのか?
アメリカ出身のアニメーターは、勃興する中国のVR界でどのようにリーダーになったのか。 by Yiting Sun2017.01.06
12月のある日の午後、ケビン・ガイガーは実質現実(VR)で物語を語ることについて、いつものように話をしようとしていた。北京電影学院の満員の講堂で、ガイガーは映画制作に関わる全ての人々(監督、俳優、制作工程の上流から下流にいる全ての人々)に、この新しいメディアに順応するには、従来とは異なる考え方をするように呼びかけた。
電影学院の国際アニメーションVR研究センターの創設者で、常任理事としてガイガーが最先端を牽引するのは、中国でVR映画の将来がどうなるか探求する、急成長中の映画制作者グループだ。ガイガーは自身でも映画を作る一方、電影学院に新設されたデジタルメディア学部で、没入型メディアのカリキュラムも立案している。
フェイスブックがオキュラスVRを買収した2014年以降、中国ではガイガーが研究しているテーマに対する関心が急成長している。20億ドルという買収額は投資家の関心を呼び、中国市場には低コストなVR機器続々登場した。2015年の後半までに100以上のVRゴーグル・メーカーが登場し、グーグル・カードボードやサムスンGear VRに似たVRゴーグルを次々に生産したのだ。
現在、VR産業が見出す好機はハードウエアを超えて広がっており、ソフトウェアやガイガーが語るような物語にまで目を転じている。新たなVR系スタートアップ企業は、うつ病を治療する患者用VRアプリやVR映画編集ソフトウェア、VRアニメーションといったアイデアを模索しているところだ。
消費者需要も根強い。中国のVR市場は2020年には79億ドル(550億元)以上に達すると中国電子技術標準化研究所(中華人民共和国工業情報化部下の研究機関で、産業の技術標準を制定する権限がある)は推計している。
中国には既に世界で最も急速に成長する映画市場がある。デロイト会計事務所による2015年の推定興行収入の63億ドル(440億元)。本格的な長編映画を十分に作れる規模であることもあって、ガイガーは2009年に数人の中国人パートナーと始めた独立系の映画製作会社マジック・ダンプリングを再開したという。微妙な政治的テーマのいくつかは禁句だが、ガイガーの目標は、VRエンターテインメントを創り出すことで、社会で起きていることに目を向けて観衆に考える題材を与え、無味乾燥な歴史ドラマしかない現在の中国映画に飽き飽きしているファンに、別の選択肢を与えるのだとガイガーはいう。
ガイガーとマジック・ダンプリングのパートナーは中国文化を基にしたアニメキャラクター …
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