新型コロナ感染拡大の「謎」解明へ、新スマホアプリが登場
新型コロナウイルスの感染拡大追跡を目的としたアプリが米国で公開された。英国ではすでに75万人が利用しており、大量のデータが集まれば、新型コロナウイルス感染症の謎の解明に役立つ可能性がある。 by Charlotte Jee2020.03.31
感染拡大を研究者がリアルタイムで追跡することで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への理解を深める新たなアプリ「COVIDシンプトム・トラッカー(Covid Symptom Tracker)」が米国で公開された。先行して公開された英国ではすでに75万人以上がダウンロードしている。
このアプリはもともと、遺伝子の役割を見極める数十年にわたる研究(TwinsUK )の参加者、数千人の双子とその家族を対象に、新型コロナウイルスによる症状を監視するため、キングス・カレッジ・ロンドンによって開発された。一般公開によって多くの人のデータを収集することが可能になり、研究者は症状と基礎疾患を結びつけ、特定の地域でウイルスがどれだけ早く拡散しているのか、感染が多発している場所はどこか、最もリスクが高い人は誰かを、より正確に把握できるようになる。重要なことは、COVIDシンプトム・トラッカーが、新型コロナウイルスの感染で危険なほど症状が悪化する人もいれば、軽い症状が出るだけの人もいる理由の解明に役立つ可能性があることだ。
参加者は、名前、住んでいる場所、身長、年齢、体重、喘息や糖尿病などの既往症があるか、免疫抑制剤やイブプロフェンなどの医薬品を服用しているか、車椅子を利用しているかといった情報を登録する。その後、参加者は新型コロナウイルスの検査を受けたかどうか、現在の調子、咳や頭痛、呼吸障害などの症状が出ているかを聞かれる。最後の3つの質問に毎日答えることが求められる。COVIDシンプトム・トラッカーを開発した研究者は、データは「完全に公衆衛生または学術研究のためだけに使用される」とし、「商業的に使用されたり販売されたりすることはない」と約束している。
言うまでもなく、このアプリが有意義な結論を導き出すには、十分な数の参加者によるデータが必要だ。十分なデータが集まれば、クラスター(感染集団)の発生やアウトブレイクが始まっている可能性がある場所の早期警告に役立つかもしれないと研究者は考えている。カーネギーメロン大学に代わってグーグルが実施した最近の調査や、韓国政府によって開発された、国民が症状を報告できるアプリのデータなど、他のソースから収集されたデータと組み合わせれば、より一層効果的なツールになるかもしれない。
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- シャーロット・ジー [Charlotte Jee]米国版 ニュース担当記者
- 米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」を担当。政治、行政、テクノロジー分野での記者経験、テックワールド(Techworld)の編集者を経て、MITテクノロジーレビューへ。 記者活動以外に、テック系イベントにおける多様性を支援するベンチャー企業「ジェネオ(Jeneo)」の経営、定期的な講演やBBCへの出演などの活動も行なっている。