韓国政府が新型コロナ感染者に専用アプリ、GPSで外出監視も
韓国政府は、新型コロナウイルス感染のさらなる拡大を防ぐため、「自宅隔離」を命じられた市民を監視するためのスマホアプリを発表した。担当職員に連絡して健康状態を報告させるためのアプリだが、自宅待機中の市民の位置情報をGPSで追跡する。 by Max S. Kim2020.03.10
中国以外で世界最大規模の新型コロナウイルスのアウトブレイクが起こっている韓国では3月6日現在、約6300人の感染者と40人以上の死者が出ている。そのため韓国政府は、数千人もの市民を強制的に自宅隔離させるなど、感染拡大を封じ込めるようと「最大限」の措置を講じている。
感染のさらなる拡大を防ぐため、韓国政府は新たな試みを立ち上げている。自宅隔離中の市民を監視できる「スマホアプリ」だ。
韓国行政安全部が開発したこのアプリは、自宅待機を命じられた市民に、担当職員に連絡して健康状態を報告させるためのものだ。さらに、GPSを使用して自宅待機中の市民の位置情報を追跡し、隔離エリアから離れていないことを確認できる。
「自主隔離安全性保護」と名付けられたシンプルなデザインのこのスマホアプリは、3月6日にアンドロイドユーザー向けのサービスが始まった。アイフォーンユーザー向けは3月20日にリリースの予定だ。当局によると、増加し続ける感染者の管理と、大勢に感染させる恐れのある「スーパースプレッダー」による感染拡大の防止にこのアプリを活用するという。
隔離ルール
韓国疾病予防管理センター(KCDC)の現在のガイドラインでは、新型コロナウイルスの感染者に接触した人に対し、2週間の自宅隔離を義務付けている。「接触」とは、感染を確認された者の2メートル以内にいた、または咳をした感染者と同じ部屋にいた状況を指す。
自宅隔離の対象者は地元の医療センターから命令を受けると、隔離エリア(通常は自宅)を離れることを法的に禁止され、家族を含む他人との接触を徹底的に避けるように指示される。隔離対象者には、地方自治体の担当職員が、電話で1日2回、発症の有無を確認し、症状が悪化した場合は移動検査チームを派遣してサンプルを収集する。
このスマホアプリを利用することで、自宅隔離者は担当職員に症状を報告し、状況の変化を伝えられるようになる。指定された隔離エリアから離れた場合は、隔離対象者と担当職員の双方に警告メッセージが送信される。
GPS追跡機能は、2月中旬に韓国全土で急激に高まった危機感を受けて追加された。新型コロナウイルス感染症が疑われる症状を示していた61歳の女性が、医師の指示を無視して検査を拒否し、「スーパースプレッダー」になった事例が発生したのだ。「31人目の感染者」として知られるこの女性は、食堂を訪れ、定期的な教会の礼拝に出席するなど普段通りの生活を続けた結果、大邱(テグ)市内の他の多くの人に感染を広めた。
現在、大邱とその周辺の慶尚北道(キョンサンプクト)は、韓国で新型コロナウイルス感染者の圧倒的大多数が集中する地域だ。韓国の感染の大多数がこの地域で発生し、感染経路をたどると、その70%近くが新興宗教団体「新天地イエス教会」にたどり着く。
「効率化」
感染者数の急増に対処するため、このアプリは当初、慶尚北道での試験用に設定される。今後数週間で全国にサービスを拡大する予定だ。
「全国の自宅隔離者数は約3万人に達しています。地方政府が隔離者の監視業務に配属できる人材には限界があります」。アプリ開発を監督した韓国行政安全部のジュン・チャンヒュアンは説明する。「このアプリは、監視の効率化を目的としたサポートサービスです」。
アプリは強制ではない。アプリのダウンロードや使用が困難な人もいるため、従来の電話を利用して監視する現行システムも継続される。オプトアウトも可能だ。
同様に、GPS追跡も厳格な強制執行ではなく、柔軟なアプローチを取っていると、当局は説明する。
「隔離エリアから意図的に離れる人もいれば、意図せず離れる人もいます」と、ジュンは語る。「しかし、いずれにせよ、二次感染のリスクがありますから、そうした不慮の事態をより組織的な形で防ぐのにアプリを役立てたいと思っています」。
ジュンは、アプリに設定されている移動制限の範囲を明らかにしなかったが、韓国行政安全部は、GPS追跡のエラーを考慮していると述べた。
このアプリのほかにも、韓国は新しい症例の急増に対処するためにさまざまな対策を打ち出しきた。たとえば、ドライブスルーの新型コロナウイルス検査所は、韓国で1日およそ1万5000件の検査実施を可能にしている。韓国疾病予防管理センターの徹底的な透明性政策によって、確認された感染者を追跡する民間開発の地図サービスも数多く登場している。また、市および地方政府は緊急警報を定期的に市民のスマホに送信し、新型コロナウイルスの新しい症例を通知している。
この豊富なデータは、時としてマイナスの側面も見せてきた。新型コロナウイルス感染者を見つけ出そうとネット上では魔女狩りが始まり、社会に恐怖感が広まった。感染者情報の漏洩も起こり、その一部は完全に虚偽であることが分かっている。
「私たちは、問題の当事者(自宅隔離対象者または担当者)だけがアプリにアクセスできるようにすることで、そうしたリスクを最小限に抑えようとしています」と、ジュンは述べる。「今後数週間、このアプリを使用しながら改善方法を考えていきます」。
さらにジュンは、韓国政府は要請があれば他国にこの監視テクノロジーを提供する用意があると付け加えた。「まだ他国からこのテクノロジーの共有支援を求められていませんが、要請があれば間違いなく共有します」。
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- max.s.kim [Max S. Kim]米国版
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