ガーナで始まった
eコマースブームには、
アフリカ特有の問題が山積
ティス(Tisu)は、アフリカ大陸で増加する中産階級に人気商品を提供する革新的なネット小売りだ。しかし、住居表示や道路が未整備のため、配達時は経路をその都度開拓する必要がある。 by Jonathan W. Rosen2016.12.27
ガーナの首都、アクラで午後の配達がピークを迎えるころ、マイケル・アションはだんだんイライラしてくる。現地のネット小売りティス(Tisu)の配送ドライバーであるアションは、街中に靴やスマホなどの商品を配達しており、ほぼ毎日、黒いヒュンダイ製ハッチバック内で一日を過ごす。いまは、取材中の私も同乗している。最後の配達になって、アションは荷物を届けられそうにないと気付いた。アクラのほとんどのドライバーと同じように、アションはランドマークを頼りに配達先に向かう。アクラのほとんどの通りは名前がついているが、ほとんどの建物には番地の表示がなく、地元民が正規の住所を使うことは滅多にない。アションの最後の顧客は、郊外にある看護学校の生徒で、電話ごしに叫んだ場所からアションを誘導できずにいた。学校と提携する病院の正門前に廃屋が立ち並び、「サツマイモ売り場」として使われている場所から先、どこに行けばいいのかわからない。アションは通行人を呼び止め、電話で顧客と話をしてもらったが、さらに別の道に迷い込んだだけだった。周囲を30分ぐるぐるさまよい、アションと顧客は別の場所で待ち合わせ、顧客が到着したら荷物の代金を払うことでようやく合意をした。結局、49ガーナセディ($12)の「Moon Love」ネックレスを届けるために、約2時間の往復時間がかかってしまった。
「配達のためにいろいろなことをしないといけないんです」とアションは街の中心部で、ティスの物流センターとオフィスがある西レゴンに戻る車で、熱帯の暑さの中、窓を開けていった。「少なくとも客は電話には出ました。目的地についても電話に出ない場合もありますが、荷物を届けるために、だいたい3回は電話で連絡して移動しなければいけないんです」
穏やかに話す28才のアションは、整備工として訓練を受け、タクシー・ドライバーを経て、ティスで働くようになり、現在は世界中のメーカーを起点にするサプライチェーンの最後の段階で、物流センターから顧客に荷物を届けるラストワンマイル(約1.6km)を担っている。海と陸を横断し、ようやくアクラで事業を営むティスの倉庫に到着する。販売数の多い商品は在庫を抱えているが、それ以外は顧客の注文ごとに商品を仕入れる。最終的にすべての商品の配達は会社が直接雇用するドライバー5人のうちの1人に割り当てられる。
ガーナでは、現在でもインターネットでの買い物は珍しい。アフリカの多くの国の状況も同じだ。アフリカの小売り販売でオンライン取引は1%未満だが、長年続く力強い経済成長により、アフリカ大陸各地の購買力は、アフリカの限られた従来型小売店の供給力よりも、西洋の消費財に対する需要を急激に高めた。特に、多くの都市が抱える交通渋滞のせいでショッピングセンターへ行けないのが理由だ。一方、スマホと高速インターネット接続はますます普及している。つまり、アフリカのeコマースは …
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