史上最高額で落札されたダ・ビンチ作品の謎をCGで解く
世界最高額で落札されたレオナルド・ダ・ヴィンチの絵画「サルバトール・ムンディ(世界の救世主)」には、奇妙なガラス玉が描かれている。コンピューターグラフィックス(CG)の手法を用いて絵に描かれた光景を三次元で再現し、ダ・ビンチが当時、科学知識に基づいて、中空のガラス玉を正確に描いていた可能性を示した。 by Emerging Technology from the arXiv2020.03.06
2017年、「サルバトール・ムンディ(世界の救世主)」と呼ばれる油絵がクリスティーズのオークションで4億5030万ドルで落札された。この落札によって、サルバトール・ムンディは2位以下に大差をつけ、美術品の落札額として史上最高額を記録した。本当にダ・ビンチの作品かどうかについてはいまだに論争が続いているものの、この作品はレオナルド・ダ・ビンチが描いたと考えられる20枚に満たない絵画の1つだ。
この作品には作者以外にも謎がある。絵には、天国の天球を象徴しているガラス玉を持つキリストが描かれている。このようなガラス玉は凸レンズのように作用して、ガラス玉の背後にある衣服を拡大したり、反転させたりするはずだ。だが、キリストの衣服は反転も拡大もされておらず、ほとんど歪みがない状態で見えている。
ダ・ビンチはガラスがどのように光を屈折させるかを十分理解していた。実際、彼のノートには、光がさまざまな物体に当たって反射したり屈折したりする様子がページいっぱいに描かれている。そこで、彼がなぜガラス玉をこのように描いたのか、という疑問が浮上する。
この疑問に対し、カリフォルニア大学アーバイン校の大学院生であるマーコ・リャンらの研究が1つの答えを示した。彼らはコンピューターグラフィックス(CG)・ソフトウェアを用いてこの絵に描かれた光景を三次元で再現し、さまざまな種類のガラス玉を通過した光がどのように屈折するかを調べた。
CGによるさまざまな描画と元の絵の表現を比較した結果、研究グループは、ガラス玉には中身がまったく詰まっていないとの結論に達し、直径6.8センチ、厚さわずか1.3ミリの中空のガラス玉のリアルな物理的表現であると示した。
まず背景知識を説明しよう。インバース・レンダリングは元々、光の流れの物理特性をシミュレートすることで、バーチャルな光景の物理的にリアリスティックな描画を生成するために開発されたCG手法である。この手法の1つの目標は、ガラスまたは水でで …
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