巨大製薬会社が鎮痛剤を売りまくるせいで、アメリカ人の平均余命が短くなっちゃった
米国人の平均余命を下げている原因は、病気だけではない。 by Jamie Condliffe2016.12.09
アメリカ人の平均余命が23年ぶりに縮んだ。
全米保健医療統計センターのデータによると、米国男性の平均余命は2014年の76.5歳から2015年の76.3歳に、米国女性は81.3歳から81.2歳に下がった。
疾患は確かに最大の要因だ。全米で群を抜いてトップの死因である心臓疾患による死亡率は0.9ポイント上昇した。アルツハイマー病による死亡者数は、15.7ポイントの急上昇だった。しかし、ワシントンポスト紙に掲載された専門家の話では、急上昇は、アルツハイマー病の死亡率が劇的に高まったのではなく、レポートが改善されたのが原因の可能性が高い。
一方で、新しい報告書をおもに執筆した米国疾病予防管理センター(CDC)のジャクアン・シュウ研究員は、不慮の死の増加を特に懸念している、とスタット(健康と医療関連のWebサイト)に語った。「自動車事故による死亡率は6ポイント上昇しました」と、シュウ研究員はその理由を説明する。「依存症による中毒死は13ポイント上昇し、そのうち97%は、薬物とアルコールの過剰摂取が原因でした」と、オピオイド依存の蔓延を特定の問題として言及した。
オピオイド中毒は、過剰摂取の恐れが非常に大きく依存性のある薬物であり、米国で深刻な公衆衛生問題になっている。オピオイド関連の正確な死亡者数は報告書に記載されていないが、不慮の死で、2014年に、2万8000人の命が奪われた。シュウ研究員は、依存症による死亡の上昇の大部分は、明らかにオピオイド中毒に起因する可能性がある、と懸念している。多くの研究者が問題にけりをつける医薬品の開発に取り組んでいる一方で、鎮痛剤のオキシコンチンのように、今や米国で一般化したオピオイドは、依然として繰り返し処方されている。
同時に、米国国家道路交通安全局(NHTSA)が最近発表した統計データでは、2015年に道路上発生した事故で3万5092人が亡くなっており、2014年の3万2744人から増えていた。たとえば、携帯電話でのメッセージの送受信やカーステレオをいじるなど、ながら運転が原因の事故は、対前年比で8.8ポイントの上昇だった。自律自動車は長期的に、ながら運転の問題をいくらか解決する可能性はあるが、準自律車両は近い将来、事故の比率を上げるかもしれない、と半自律自動車は不注意死亡事故を増やす。
しかし、報告書には潜在的にわずかな希望の兆しがある。米国で2番目に大きな死因であるがんの死者数は、事実として2015年に1.7ポイント下がったのだ。がんへの関心が高まったことも一因だが、一方で新しい治療法を生み出す、たゆみない研究努力のおかげでもある。
できれば、不慮の死の原因も、イノベーションで早めに減ることを願おう。
(関連記事:National Center for Health Statistics, Washington Post, Stat, “半自律自動車は不注意死亡事故を増やす,” “鎮痛剤で年間2万人弱が死亡 米国型医療の闇”)
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- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。