「EV革命」過剰な期待、リチウムイオン電池価格のMIT新予測
リチウムイオン電池のコスト低下は今後数年で行き詰まる可能性がある。MITの報告書は、大幅なコストダウンを前提とした現在のEVへの過剰な期待に警鐘を鳴らす。 by James Temple2019.12.11
電気乗用車や電気トラックが、すぐにガソリン車並に安くなると期待してはいけない。
マサチューセッツ工科大学(MIT)エネルギー・イニシアティブの最新の報告書は、リチウムイオン電池に依存している限り、EV(電気自動車)のメーカー希望小売価格をガソリン車並に引き下げることはできない、と警告する。リチウムイオン電池は、今日一般に使用される電化製品のほとんどを支えるエネルギー貯蔵テクノロジーだ。実際、高い燃料費やメンテナンス費を考慮に入れても、標準的な電気乗用車や電気トラックとガソリン車との生涯コストの差をなくすのにもう10年はかかる見込みだ。
この結果は、EVが今後5年以内にガソリン車と同等の価格を実現できると結論付けた他の研究グループの調査結果と大きく矛盾している。報告書が予測したなかなか埋まらない価格差は、低公害車への移行の妨げとなる可能性がある。政府はEVの普及と気候汚染の低減を同時に達成するため、補助金を拡大するか、より厳しい規制を導入する必要がある。
輸送は、米国における最大の温室効果ガス排出源であり、世界で4番目に多い排出源だ。そのため、よりクリーンな自動車や大量輸送システムへ大転換されない限り、危険な水準の地球温暖化を回避するのに必要な温室効果ガス削減を達成できる方法はない。
問題は、原材料費によって決まるリチウムイオン電池価格の値下げが限界に近づいていることだ。EVを動かし、コストの約3分の1を占める電池価格の着実な低下は、今後数年で減速してしまいそうなのだ。
MITの未来モビリティ・グループのランドール・フィールド事務局長は、「EVが安くなるという予測のいくつかに従えば、最終的には製造に必要な材料よりも電池の価格が安くなるでしょう」と話す。「私たちは、それは予測の欠陥とみなしています」。
データ
現在のリチウムイオン電池パックの価格は、キロワット時あたり約175〜300ドルだ(一般的な中型EVには60キロワット時の電池パックが搭載されている)。
複数の企業研究者や学術研究者は、リチウムイオン電池の価格が2025年までにキロワット時あたり100ドルに下がると推定している。多くの専門家がEVとガソリン車の小売価格が補助金なしで同等になると主張する「マジック・ナンバー」だ。そして、100ドルに下がった後も、下落し続けるとしている。 …
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