読者からの質問:「スター・ウォーズ」の技術は実現しますか?
映画「スター・ウォーズ」には、はるか彼方の銀河系で発明されたさまざまな技術が登場する。実現する可能性が高そうなものはあるだろうか? by Neel V. Patel2019.11.05
MITテクノロジーレビューが配信している宇宙に関するニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」では毎週、読者から宇宙担当記者のニール・V・パテルへの質問を募集している。今週の質問は、映画「スター・ウォーズ」に登場するテクノロジーについてだ。
読者からの質問
「先ごろ、新しいスターウォーズの予告編が公開されましたが、ちょっと疑問を持ちました。ジョージ・ルーカスのスペース・オペラは、実際の科学とはかけ離れた、ほとんどがただの空想の産物である「ソフトSF」として知られています。だけど、このシリーズに出てくるテクノロジーにも何かしら、現実に基づいているものがあるはずですよね? はるか彼方の銀河系で、最も現実にありそうな発明やガジェット、機械は何ですか?」(ジャックより)
ニール記者の回答
スター・ウォーズに登場するテクノロジーの中には、実際に現実に実在するものがかなりたくさんあります。ロボット工学の分野では、ドロイドのように動きまわり、動作する機械が作られています。バイオテクの技術者は、切断されたり損傷を負ったりした手足を代替あるいは補強するハイテク義肢を開発しています。数多くの分野で(特に医療の現場で)ホログラムが普及してきていますし、人類は空飛ぶ車の実現を目指して終わりなき探求を続けています。
ただ残念ながら、宇宙関連のテクノロジーについて言うと、スター・ウォーズは度を超えて奔放です。宇宙飛行の描写に関して、現実に即した部分はまったくないと言ってもいいでしょう。1機のロケットを実際に地表から宇宙空間へ送り込むためには、ものすごい量のエネルギーと努力が必要です。そのプロセスの中では、いつどこでミスが発生して破滅的な失敗につながってもおかしくはありません。また、真空の宇宙では、宇宙船を航空機のように移動させることはできません。
公平を期して言うと、スターウォーズ(やその他のSF作品)の中には、科学者や技術者が実現させたいと思うようなアイデアもいくつか提示されています。宇宙船内の人工重力が1つの良い例です。宇宙の無重力は人体に数多くの問題を引き起こす恐れがあり、人工重力は人体への悪影響を緩和するために役立つかもしれません。
スター・ウォーズでは、「デス・スター」のような超大型宇宙ステーション内でも、「Xウィング」のような小型機においても、人工重力はまるでエーテルか何かのように、ただそこにあるものとして描かれています。全く理屈にかなっていません。
それでも、「2001年宇宙の旅」のように強い遠心力を発生させることで、宇宙空間で疑似的な重力を作り出せるかもしれないと多くの専門家が考えています。人類が人工重力の実現に最も近づいたのは1966年、米航空宇宙局(NASA)のジェミニ8号によるミッション中のことでしたが、 それは事故による高加速が原因で、ミッションは中止を余儀なくされました。同年、ジェミニ11号が回転による人工重力の生成に挑みました。小型の物体がカプセルの端に向かって落下する様子が観察されましたが、人工重力の効果は乗組員たちには感じられないほど弱いものでした。
現在、人工重力を宇宙開発の最優先課題とみなしている人はいませんが、一方で専門家たちは、実装のための新たな研究計画の提案を続けています。より長期にわたるミッションを追求していくなかで、人工重力は今よりも真剣に受け止められるようになっていくでしょう。宇宙船内で地球の重力を疑似的に発生させるという大まかなアイデアは、想像を絶するようなものではありません。ただ、たくさんの優れた工学技術と、いくつかの国々の年間GDPを上回るような予算とリソースを必要としています。
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- ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
- MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。