ロシアで「インターネット鎖国」を可能にする法律が発効
ロシアの「主権インターネット」法が11月1日に発効した。これによりロシア政府は、インターネット上での出来事を、これまでよりはるかに多く制御できるようになる。
新たな法律は、5月にプーチン大統領によって署名された。ロシアの通信規制当局である通信・情報技術・マスコミ監督庁(Roskomnadzor)に対し、政府が安全保障上の脅威とみなすコンテンツへのアクセスをブロックする権限を与えるものだ(MITテクノロジーレビューは今年、ロシアの計画に関する詳細な記事を掲載している)。ロシアのインターネットを独立したものにすると同時に、外国からの攻撃からロシアのインターネットを防衛するのを容易にすることが目的だ(「ロシアが一時的な『ネット鎖国』を計画、軍事演習の一環で」を参照)。
1月1日から、ロシアのインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)には、いわゆるディープ・パケット・インスペクション(DPI)というネットワーク機器の導入が義務づけられる。この技術によってトラフィックの発出源を知り、コンテンツにフィルターをかけることが可能となる。この法律はさらに、ロシア版のインターネットのアドレスブック、つまりドメイン・ネーム・システム(DNS)を作ることも義務づけている。これによって当局は、ロシアのユーザーに気づかれることなくトラフィックの流れを変えることが容易になり、事実上ロシア内で代替現実を作れるようになるだろう。しかし、この部分は技術上複雑であり、実現はまだしそうにない。
今年に入ってから、何千人ものロシア人がこの法律に反対したが、無駄に終わった。市民の権利を擁護するグループもこの法律を懸念して行動を起こした。人権NGO(非政府組織)のヒューマン・ライツ・ウォッチ(Human Rights Watch)は、「安全保障上の脅威」の定義があいまいであるため、何のトラフィックの流れを変えるのか、あるいは何をブロックするのかについて、政府に過大な権限を与えることになると述べた。
ヒューマン・ライツ・ウォッチの欧州・中央アジア担当副部長を務めるレイチェル・デンバーは、「ロシア政府は今や、コンテンツを直接検閲できます。政府が何をしているかとか、その理由を国民に伝えることなく、ロシアのインターネットをクローズド・システムに変えてしまうことさえ可能です。ロシアの人々の言論の自由や、インターネット上の情報の自由といった権利が脅かされています」と同団体のWebサイトでコメントしている。